質屋のスタッフブログ
2023年05月15日
鴫原質店の弟さんです。
ネット販売用に写真をパシャパシャ撮影して加工する単調作業が続く退屈な日常の中、たま~に「おおっ!これはっ!」と心ときめく品物があったりします。そんな個人的に何かを感じたものをブログで紹介したりするのが少し好きかもしれない。
今回の紹介するお品物はこの指輪。手間を省く為にネット用の商品画像をそのまま使用しますが、宝石が好きな方はこの青っぽい透き通った石を見て「あれかな?」と瞬間的に思う方が多いのではないでしょうか?。
そしてもう一つの画像を追加します。
この画像をみて最初に想像した宝石名が確信に変わるかも。私自信はこれを見たら個人的に大好きな「アレキサンドライト!」を思い浮かべます。赤っぽいライトに反応して色を変える摩訶不思議な魅力を持つアレキサンドライトは宝石好きに特に好まれ、大きなものはとても高価です。
ところがこの鉱物様はアレキサンドライトではありません。
「今までの話の流れは何だった?」と突っ込みが入りそうな流れですが、なんとこの鉱物はカラーチェンジガーネット。「なんだ・・・ガーネットか」と誰かの心の声が聞こえてきそうな気分です。普通の一般的にありふれたガーネットは物量がとても多い為、2次流通ではさほど価値がつかないのも一つの現実です。とはいえ、キャンプファイヤーの焔に照らされて色が変わりすれば、私にはそれだけで魅力的なので、鉱物の名前や種類なんてどうだっていいところ。むしろガーネットがセッティングされている珍しさに好感がもてます。
見た目が殆ど変わらないこの2つの鉱物の違いを、どのように判別するかについて。
屈折率を測れば分かりますし、ソーティングに出せば簡単に分かりますがもっと簡単な方法があります。暗いところで紫外線を照らすとアレキサンドライトは光に反応して赤っぽくなりますが、ガーネットは全く反応しません。理由は簡単で、アレキサンドライトには蛍光性があり、ガーネットには蛍光性がないから。とても簡単な判別法なので知っていて損はありません。相変わらず話がそれますが、私はブラックライトでダイアモンドを照らすのが大好きで、蛍光性のあるダイアモンドは元気よく紫外線に反応して青白く光ります。画像でも分かる通り、同じメレダイアでもこんなに違いがあって楽しいですよ(笑)。
ジュエリーに関する見解は人の数だけ違います。
宝飾品の売買価値や使われている鉱物の価値だけがその楽しみ方ではなく、身につけた時の感じや見た目を重視する方も多いのが現実だと私は感じています。こんな感じで指につけた時、このセットされた鉱物がガーネットなのかアレキサンドライトなのか、見た目で判断できる人は恐らくいません。赤い光で変色する鉱物がセットされている綺麗な宝飾品であるこの指輪は、こ十分素敵なジュエリーとして成立してるのではないでしょうか。
ガーネットの和名は「柘榴石(ざくろいし)」でモース硬度(鉱物の硬さ)は7.0-7.5。1月の誕生石として知られている他、誰が考えたのか分からない様々な「宝石言葉」もあり、パワーストーンアクセサリーにも多く使用されます。一般的なガーネットと少し異なるカラーチェンジタイプガーネットにも様々な種類があり、その個体によって特徴的な色の変化があり、そしてまた白色灯や赤色灯など光の種類によっても色の変化が異なります。鉱物内に多く含まれるバナジウムや、鉱物形成段階における様々な物質の微妙な入り方によってその特徴は変化するので個体差が大きいんですね。GIAのホームページ(こちら)にガーネットに関する色々な資料があるので、ご興味ある方はご覧ください。英文の説明もグーグル先生が簡単に翻訳してくれる時代なので興味さえあれば簡単に楽しめます!。
今回取り上げたのはアレキサンドライトと同色に変色するものでしたが、青や赤やオレンジや虹色など変化する色も様々あり、そんな特徴からガーネットは「殆ど全ての色をカバーする」珍しい宝石の一つとなり、珍しいものはやはり高価かな。ガーネットは十分魅力的な鉱物で、素敵なジュエリーを構成できる一つの宝石であり、ブルガリなどのハイジュエリーにも多く使われいます。アレキサンドライトとガーネットの比較から始まりましたが、私的には「セットされた鉱物の名前や種類って重要なのか?」と、このジュエリーを見てると思ってしまいます。「なんだ・・・ガーネットか」とか思わずに、「ガーネットか!。珍しくていいじゃん」という考え方もありのような気がしますが、皆さんはどう思いますか?。
本日は以上でございます。
2023年05月06日
鴫原質店の弟さんです。
3月中旬の事でしたが、リシュモンジャパン様からお店に荷物が届きました。
少し前に依頼した「ジュエリー洗浄」を無事に終えた事はすぐに理解しましたが、「この大きな箱は何だ?」という戸惑いがありブログ用に写真を撮影していきます。カラーやホワイトバランスが安定しないのは携帯電話撮影の為ですのでお許し下さい。
上の画像では、何かと大きさを比較したくて自分の小汚い手を画面に入れてましたが、箱の横幅はこんな感じ。
なんと27センチもあります。
開封していくとそのステキすぎる梱包に心から驚き、とても楽しませて頂きました。
私は中に入っているものを分かっていますが、もし中の物が分からなかったらどんなにドキドキするんだろう。ワクワク感でいっぱいになりながら中身を確認していくこの演出は最高デスな!。尚、箱のお色に関しては「②」が正しい色味です。
そして辿り着いた白く小さな箱を開けると。
そこにはもう一つ保存袋が・・・・(笑)。本当に楽しませてくれますね。
そしてやっとたどり着いたその先には、アルハンブラスウィートペンダント様。(公式サイトURLはこちら)
メーカー様での洗浄を経て無事に帰還してくれました。その幅は約1cmですが・・・・。
この小さく可愛いジュエリーを演出付きで返してもらえるって凄いよね。
無駄が多いとか送料が高くなるとか、そんな凡人じみた感覚ではブランド力は養えない訳で、この大きさの比率が面白くて撮影している私は、間違いなく一般市民であることを自覚させられます。とても凄い事だけど「いいのかコレで?」などと感じてしまうのは、私が庶民的感覚の持ち主だからにすぎません。恐らくその一方で、高価格帯ジュエリーを保有するステータスとして、ここまでされるのは当然の事と思われる方もいるはずです。
さて、こんなに素敵に対応頂いた料金はというと。
もちろん無料 (^_^:)。因みにですが、メーカー様にジュエリー洗浄を依頼すると、「発送キット」が送られてきてそれに入れて送る訳ですが、往復の送料と洗浄代金が全て無料です。もの凄い対応だと思いません?。流石に大人気の一流ブランドジュエリーメーカー様でございます。
忘れていけない事ですが、ジュエリーの洗浄作業や商品の発送や梱包には間違いなく費用がかかります。近年、「送料無料」という言葉が「いい意味」と勘違いされて使われてきましたが、誰かが代わりに支払うか、又は大体の場合で商品代金に上乗されてるだけに過ぎません。仙台市では○〇協会さんが「トラックでの運搬には費用がかかってます」とテレビCMで訴求するなど、費用や経費という常識概念が消え去った世の中に対して理解を求める動きさえでてきてます。そんな流れの中で整理して考えると「送料無料」を「いい事だ!」と感じていい時代は終わりに近づいてきてるのかもしれませんね。
では今回の送料やメンテ費無料についてどう思うか?。ハイブランドに関していえば原価(金の重さやシェルの価値)などを気にする人には理解しがたい価格で販売されておりますが、購入時に一生分のメンテナンス費用を先に払っていいると思えばよろしいのかも。例えばジュエリー洗浄のコストが1万程度と仮定すると、これを毎年20年間続けたとしたら、定価¥206,800のジュエリー価格が不思議と安くさえ思えてきます。このような対応とか信用とか憧れとか、そういうもの全てが多くの方に愛され、そしてブランド力を更に高めていく要因とさえ思えます。箱を開けていくのは本当に楽しかったし、「流石です!」と感じてしまった出来事でした。
本日は以上でございます。
2023年04月22日
鴫原質店の弟さんです。
何となく「いいな~コレ」と思った時計がありましたので取り上げます。
それがこちらの手巻き式懐中時計。今では生活必需品となった携帯電話の普及により、時計本来の役割だった「時間を確認するモノ」という位置づけは既に過去のものとなりつつあります。代わりの役割として「ステータス」や「携帯電話の延長」又は「ファッションの一部」としてなど、様々な用途で使われている時計達ですが、最近見なくなったな~~と思うのがこれら懐中時計。ポケットウォッチとも呼ばれますが、ファッション的にもステータス的にも「なんかいいな~」と思っております。
オールスケルトンで機械式時計のほぼ全てのパーツが鑑賞できる点は時計好きの心を串刺しにしそう。
表裏に小さくひっそりと刻まれた「CREDOR」という文字には好感が持てます。どこの時計か一見では分からないこの奥ゆかしさに加え、この時計が放つ独特のオーラが高級感を漂わせており、流石にクレドールという感じかな。静止画像では伝わりませんが、動き続けるムーブメントには魅入ってしまいます。
搭載されたムーブメントについて調べる為、「6899A 公式」とグーグル先生に尋ねるとセイコーの公式ホームページ(こちら)にその歴史やムーブメントに関する説明がありました。
このモデルの原点であるムーブメントの開発が始まったのは1969年の事。厚みが1.98ミリの薄さに加え美しさや実用性を備えたムーブメントが開発され製品化されていくなかで、前も書いた事のあるクォーツショック(こちら参照)に見舞われ、70年代後半には製造が中止されたそうです。時を経て、市場環境の変化や開発者の方々の熱意から1990年代に開発が再開されました。そして量産としては日本初のスケルトンキャリバー6899が完成し、1996年に発表された初代モデルに搭載されたとの事。この時計の歴史を知ることで、私には益々素敵に見えてくるから不思議だね。※この画面はセイコー公式ページのスクリーンショットを掲載しました。公式ページも是非ご覧ください!。
公式ページに説明書きがありましたが、細かく刻まれた模様は手彫りとか。
(以下 公式ページから引用)
総厚1.98mmのキャリバー6899の最薄の部品の厚みは0.25mmしかなく、強い力を加えると突き抜けてしまいます。そこに0.15mmの深さの範囲で彫金を施すためには、彫りの技術だけでなく、長年訓練した指先の感覚が必要です。まさに熟練の彫刻師のみがなしえる工程といえます。
(ここまで)
もの凄い事をやっていそうなのは理解しますが、その凄さの程度のイメージが湧きません。0.15ミリの彫金って神業レベル?、しかも金を手で彫るわけですからとにかく凄い事なのでしょう。公式ページでは実際に刻金する道具なども紹介されていたので、ご興味がある方は是非ご覧ください。
静止画(画像)で伝わらないのが本当に残念な部分。
時を刻む(針を進める)為にこんなにも色んな子達が元気いっぱい頑張ってるんです!。皆がんばれ~~って応援したくなるわ。
ルーペで観察すると少し痛々しい部分もチラホラと。
分解清掃(オーバーホール)は時計の機能を維持する為に欠かせないのは事実ですが、必ずしも無傷で終わるものではありません。ネジを回せば100%の形状維持は不可能に近い事だし、金属と金属がぶつかれば傷はついてしまいます。そういう背景も考えると、観賞用に適したこのような時計には、定期的なオーバーホールなど不要にさえ「私は」思います。秒針がついてないから1日に数分遅れたって何の影響もないし、そもそも毎日使うものでもない上に数日で止まってしまうから、精度を求めても意味はありません。時計の機能的にどうしてもメンテナンスが必要になったら、心を鬼にして子供の背中を押すように、メーカー様(セイコー)に連れていきましょう。時計の事を本気で思うなら、無傷での帰還を祈りながらも、セイコー様を信頼するのが一番よい選択だと私は思います。
今回取り上げたこの懐中時計ですが、「欲しいな~」などと思っては見たもの、高すぎて私には軽々しく出せる金額ではなく諦めました(さよなら・・・)。18金で造られた時計(チェーンも18金)なので、金価格暴騰の影響をモロに受けているようです。とはいえ、最近のクレドールの販売価格を見ると超高級化が進んでいるので、それと比べるととても安いような気もするんだけどね。もう少し大人になったら(←おっさんが何言ってる?)買うチャンスがあればいいな~など切なく思います。(※尚、この時計は既に売却済みでございます。)
本日は以上でございます。