2023年09月16日
鴫原質店の弟さんです。
数日前、お電話で「K18の刻印のある印鑑の査定はできますか?」という問い合わせがありました。印鑑の場合、品物を預り検査をしてからの査定になり、それでも良ければとやらせて頂きますと回答します。そんな問い合わせがあった数時間後、お客様がご来店され実物を拝見しました。(尚、最初は傷も凹みもありませんでしたが、査定の為に必要な処置を行い、ボコボコになっています。そして全ての画像は買取が成立した後に、お客様からブログ掲載の許可を得ております。)
三越の刻印とK18の刻印が刻まれてますが、なんと言うか・・、贅沢を極めたお品物。古くから家にあったものという事で、金相場が高いうちに売却したいというご要望でした。尚、左画像の底部が凹んでいるのは、ハンマーでガシガシ叩いたからです(笑)。
問題は印鑑という分厚い物体がどこまで18金で構成されているのか。比重を測ると9ぐらいしかなく、全部が18金かどうか店内の設備では確定できません。三越の刻印もあるので品物から悪意は感じませんが、中が空洞で造られているだけか、または中に違う金属が入っているかを外見から判断する事は不可能です。この品物は「金である」事を前提に話を進めましたが、比重が18金と同じタングステンの回りを薄い18金でコーティングすれば、比重も見た目も18金の物体を簡単に作成する事ができたりするので、このような金の塊にみえるジャンルの品物は注意が必要です。X線分析で済めばそれで18金を確定(←X線検査は表面しか判別できません!)、それでも分からない場合は破壊して内部の素材を確認して18金の分だけ査定する事しかできない旨をお客様に伝えると「何でもやって下さい」と了承頂きます。(※繰り返しますが、最初は切り口も傷も凹みもない棒状の物体でした。)
少し不安だった事もあり、受け付けた時点で思う事をお客様に何度も説明しました。他の金属の棒状ものを18金で覆っているだけの可能性があり、金が5グラムしか取れいなどの結末も想定でき、そんな可能性から【品物として保管しておく事も一つの手】である事をご説明します。お客様の想定は60グラムの18金で、最悪の結果が出た時のイメージ作りを事前にし続け「本当に壊してもいいんですね?」と何度も聞き返しますが、「やっちゃってください!」との事で、こんな繰り返しが何度も続きました。
お店でこの分厚い印鑑をぶった切る事は出来ないので、取引先に破壊検査及び成分分析をお願いし、戻ってきたのがこんな感じ。中が空洞の構造だった事と、全てが18金である事は検査結果で証明されてます。ハンマーで叩いたり、ペンチで摘まんだり、最後は何で切り刻んだのか・・・。とても大変な作業だったと思います。
面白いな~と思ったのが中の物体。真っ黒だけどこれ18金らしい。焼いたのかな?。なかなか珍しい光景だ。これを見た目で18金と判断する事は不可能で、X線検査の素晴らしさを実感します。磨けば金色に光るのだろうか?。お客様が最初に来店頂いてから、3日程時間を要しましたが、比重がでない金の物体(=印鑑)は42万円強で買取させて頂き、全てお客様の要望通りになり喜んで頂けたようです。
個人的に感じたのは、印鑑って「金で造る必要があるのか?」という事。このような品物って、金価格が今よりも遥かに安く、経済的にも裕福な時代の品物であるのは間違ありません。そんな時代を経験したことがないので、少し羨ましくもあるのですが、欲しいかと言われれば「いらない」かな。ただで貰えるな欲しいけど、対価となるお金を払うのであれば間違いなく買わない気がします。今時の金価格でこんな品物を造ったら、一体いくらかかるんだろ・・・と無駄に想像してしまいました。
本日は以上でございます。