質屋のスタッフブログ
2024年11月25日
鴫原質店の弟さんです。
「類は友を呼ぶ・・・」という言葉があるが、今月2回目のご対面でこれは珍事に違いない。
そして今回は、より緊張感が増す1911年の10ドル金貨!。警戒心を煽るこの枠の雰囲気は、もしかして今まで散々見てきたアレかもしれない・・・。品質の悪いダイアモンドで着飾る、750刻印の枠には怪しい先入観を抱きました。
【宿敵登場か!?】
お客様へ丁寧に説明し、過去の経緯や偽物の実物をご覧頂き、購入できる金額を伝えた後にやれる限りの検査を開始します。
法定通貨である10ドル金貨は16.72グラムだけど、目の前の品は重量が16.30グラム・・・・。目方(重量)はデータ値より少ないけど、比重はOK、試金石の色味はOK、硝酸もOK。色味はちょっと不安があり、銅が入ってるような色味には見えないのは何故だ?。とはいえ、できる範囲の事で見る限り、個人的には21.6金であると判断して買取を決意します。あ~~怖い怖い。
製造から100年以上が経過する今現在、色々と「いじられてる」のよね。
部分的に削られていて、ジュエリーとして加工するする為か、厚みが調整されていました。逆にこの部分をみて中身は金(ゴールド)とも確認できる。重さが違う点はこんな発想で、自分を納得させる材料にしてますが、あ~~怖い怖い。
ここは厚みを足したと思われる部分。
金を加工してるだけなのでなんとも思わないけど、アンティークあるあるの話でもある。そもそもココに足された部分の金品位はどの位なんだ??。
1911年のインディアン金貨は前回も触れたけど、ダメな物(金じゃないもの)を沢山見てきました。
持ち主に全く悪意が無いのも特徴で、それがいつの時代に製造されたものかも正直分かりません。全知全能のグーグル先生に尋ねると、発行年数は1911年で枚数は505,595枚との事で、発行枚数は1910年製との比較で物凄く少ないのに、いっぱい見る理由はそんな経緯もあるのかも。冷静に淡々と観察し、やれる限りの事をやらないとひどい目にあいます(←なんせ経験者です!!)。
状態的にとても綺麗に見えるところが「かなり嫌」だったけど、こんな部分も興味深いね。
発行から113年が経過し、所有者が変わる時に疑念を抱き、確信を持つために一部にメスを入れたのかもしれない(←※妄想!)。硬い金属ではこのような細い溝を掘り進めることは容易でなく、この傷こそが柔らかい金の特徴でもあります。
今回の金貨は「綺麗すぎた」から余計に疲れました。下記画像は、真ん中が今回の品、右が前回の品、左がずっと前から持ってるサンプル(偽物)。
柔らかい金(ゴールド)という素材が色んな形状に変化していく中で、彫りとかデザインとか模様とかを参考にはしますが、状態が個別に違うので金貨はとても難しいな。上の方に銅が入っている色味に見えない・・・などと書いてしまいましたが、並べて見ると入ってる色味にも見えてしまう。僅か10パーセント(←銅の割合)の成分の違いは、とてもいいヒントになります。
金価格高騰により、色々なトラップ品が増えてきたこの10数年。判別の難易度も上がってきてますが、今はまだ何の不安も感じず直ぐに決断できてます。ただ、金貨は判断基準の少なさと、損失の大きさのバランスが非常に悪い商品なので、「綺麗すぎるもの」は破壊検査を前提!、綺麗であればあるほど傷つけないと買えない・・・など、そんな対応が今後は一般的になる可能性ありえそうかも。凄く出来のいい「偽物コイン」を拝見させてもらって以降、ゴールドの柔らかさを視認できないものは「バ~ルでへし折るゼ!」位の勢いで考えるようになりました。確証が得られないものに関しては、触らぬ神に祟りなし・・・ですね。しかし、1910年の金貨を見て興奮し、1911年の金貨を見ると怯えるてしまうという、この心境こそが経験則ってやつなんだろうね。あ~~怖い怖い。
本日は以上でございます。
2024年11月16日
鴫原質店の弟さんです。
今回はバブル経済絶頂期を感じさせるこの指輪について。
前回の10ドル金貨の話に関連する話でもあります。
まずは指輪の状態から。
18金の指輪ですが、放置し続けると酸化してこうなります。因みに最終局面では真っ黒に・・・・(汗)。
使用に伴うボコボコの凹みは気にしませんが、こういう部分は要確認です。
あちこちに入った亀裂により、指輪の崩壊が近そう。流石にこれは売れないね・・・。
そして原形をほぼ失った中央のコインに心が躍ります。
スレて削れて模様が消えてる状態は凄く残念だけど、1911の文字がしっかりと確認する事ができ、もしかしてこれは・・・・?。
「裏面も見てみたい!」との思いから、取り出そうと試みます。どうせ販売できる状態ではないので、金のグラムさえ減らさなければ問題無いのだよ!。
コインを抑えてる部分をちょっとずつ避けてみましたが、部分的に完全に同化しており、分離作戦を諦める事にしました。強い熱で溶かしながら蓋をしていく過程で、純度の高い中央のコインが先に溶けてしまったのかな。やってやれない事はなさそうだけど、相当な時間がかかりそう・・・。
気を取り直して、コインの細かな部分を見ていきましょう。
とても柔らかい金属である金(ゴールド)は、何かに擦れ続けるだけで削られます。描かれているのはインディアンですが、長年の打痕やスレの繰り返しが細やかな描写を削り取っていった様子が想像できてしまい、それはそれでロマンを感じる一方、ここまでなるか~という驚きもあります。
コインの大きさはこんな感じ。
直径約18ミリから想像できるのは2.5ドルのインディアン金貨。重量は4.1グラムで発行年数は1908年から1929年まで。こんな状態なので、本物かどうか何て分かりませんが、本物かどうかに疑問を感じる事は一切なく、品位はau900の21.6金だと確信しています。でもさ、この角度から見ると、インディアンなどには到底見えず少し怖いかも。
グーグル先生のおかげで、状態の良い金貨なども簡単に見る事ができる時代です。この金貨も、髪の毛の描写やインディアンの目線や耳飾りに、反対側に描かれるイーグルや「2 1/2DOLLARS」の描写など見どころは多数アリ。しかもコレ、113年前の実貨幣である可能性を考えると少し興奮する!。この金貨4枚と前回の10ドル金貨を両替したりしたのかな?。奴隷制度なんて当たり前にあった時代に、この金貨はどの階級の人が持てたのだろう?。労働者の給料ってどの位だったのかな??。実貨幣と言えど、国民全員が皆、この貨幣を手にすることは恐らくないと想像できるけど、どんな社会だったのかを考え始めると、一日中調べてしまうタチなので、この辺で終わりにしておこうと思います。そんで、更にどうでもいい話だけどさ、この時代のお財布ってどのような物を使ってたんだろう?。重たい金貨を何に入れて運んだのか、とても興味深いところです。ポッケにジャラジャラ入れてたりして(汗)。昔の品物から色んな事を連想するのって、結構楽しかったりします。
本日は以上でございます。
2024年11月12日
鴫原質店の弟さんです。
今回はお店で買取したこのペンダントヘットについて。
昔からのお客様の品物だった事、そして視覚的に問題ない!と判断し買取させて頂きましたが、通常この金貨は査定額にご納得頂いた後に、枠からコインを取り出して、コイン単独の検査をしてから買取する流れです。枠に入っている状態だとちょっと不安もあるから・・・というのがその理由。
普通は、コインを囲むこの金属は果たして金だろうか?から始まります。
ロウ付けされてる部分の雰囲気で、金と判断しますが一応・・・話の流れ的に壊します。
爪をたててコインを取り出しました。
少しの力でグニャ!っとなり、金の柔らかさを確認。因みに白いのは接着剤かな。
念の為、話の流れで試金石と硝酸テスト。
高純度の金である事が確認できます。
次にコインの比重を計測。
比重の説明は何度もしてるので省きますが、17.2でクリア!。特に問題がない21.6金のコインだという事が判明します。ま~大体の流れはこんな感じかな。
そこまで神経質になる理由はコレ。
今から20年前くらいの事、このコインの偽物が大量に出回っており、当店でも一つだけ掴んでます。今まで何度となく偽物のコインを見続けてるので、市場にはまだありそうかな。18金の枠にコインだけ偽物が入っている物が多く、そんなものを何度も見てきてるので、今でも警戒感は消えません。既に趣味となってしまったコイン鑑賞のキッカケでもある。そして今では見てすぐ「金じゃないね」と分かるこのコインは、その当時の私達(社長と私)には気づけなかった悲しい過去と損失の証!。※18金が800円の時代の話で、損失は大した事ありませんが・・・(笑)。
枠に入っている状態では確認する事の出来ない側面に、青錆(緑青)があるものが多く、実は粗悪品だったりします。
外傷の部分からその内部が確認できれば、その時点でアウト判定。最近は、とても精巧なコインの偽物がでており、上記検査などでも判別不可能な構造をしており、中々難しい時代となりました。地金屋さんにそのコイン(←偽物)の実物を見せて頂きましたが、メッキの雰囲気を察するとか、硬い物を当てた時の「音」が違う・・・とか、言葉では伝わらない感覚的な部分も大切な気がしてます。そして前例(※情報含む)のあるモノは破壊検査前提で話を進める事になりそうな予感も。触らぬ神に祟りなし。
金独自の柔らかさや、レリーフのされ方なども参考に。
金相場高騰につき、1つ掴んだだけで相当な損失が確定するので、念には念を。そして目の前にあるものを注意深く観察し続けようと思います。
そして最後にコインのご紹介。これはアメリカの旧法定通貨インディアン金貨。
直径27.1ミリで重量は16.72グラム(※比重計では16.73になってた!)。金品位はau900のK21.6で、発行期間は1907年から1933年です。御年114歳のとても古い金貨で、今まで何人の所有者を渡り歩いてきたのか・・・。傷が少ないものは若干のプレミアムもついてますが、ここまでボロボロだと難しいかな。1910年の発行枚数は約235万枚ちょいで、それこそ昔は日本でも沢山みる事ができたけど、最近少なくなってきたかな。
もう片面はアメリカの金貨に多いイーグルが描かれてます。
そして面白いのは、この金貨の価値が10ドル!ってところ。1オンス2,800ドルを瞬間的にとはいえ超えた今日この頃、1グラムのドル建て金価格は2,800÷31.1≒90ドル。この金貨が約16.7グラムなので、ドル建てでこの金貨の現在価値を算出すると約1,500ドル!!。金本位制だった時代にこれら金貨をタンス預金でため込んだ一族は、もの凄い富を築いたに違いない。ただ、ニクソンショックやブレトンウッズ体制崩壊などの歴史を見るに、1オンス35米ドルと固定されていた金(ゴールド)が変動相場に移行する過程で、金(ゴールド)を保有し続ける事の出来た勇気ある方々でもあるので、とても真似なんてできやしないし、そもそも結果論かな。
アメリカで金本位制度が廃止されたのは1933年で、これはこのインディアン金貨の最終発行年でもある。金本位制の時代に10ドルという「実貨幣」だったこの金貨が、本当に10ドル分の金が使用されているか興味が湧きました!。貨幣は金(ゴールド)と同価値と定める金本位制との連動制を確認する為、いつも使ってるトレーディングビュー(こちら)のフルチャート表示で1910年1月3日の金価格を確認してみます。すると、1オンス約20.6ドルであることが確認でき、「20.6÷31.1=0.662」だから当時のドル建てゴールドは1グラム0.662ドル。コインが21.6金って事は90%が金って事なので、16.7グラム×0.662×0.9≒9.94!!。お~~~さすが法定通貨!!でほぼピッタリ10ドル分の金が使用されてると分かりました(※当たり前だ!とか突っ込み不要!!)。興味さえあれば、知りたいことが簡単に調べられるいい時代です。
こういう品物を見ると私は妄想が止まらない・・・・。昔の品物を見て、当時の歴史や社会情勢を空想するのがとても好きな私は、当時の10ドルで一体何が買えたのだろう?と考え始めますが、興味がある事や調べた事を羅列しまくると、恐ろしく長くなる傾向があるので、ここまでにしておこうと思います。ちなみに、法定通貨が金貨という事は、当たり前ですが、買い物した時の「おつり」も金貨!。その「おつり」に使われてたかもしれない品物も譲って頂いたので、気が向いたらネタにさせて頂きたいと思います。歴史って面白いですね(笑)。
本日は以上でございます。