質屋のスタッフブログ
2021年04月24日
鴫原質店の弟さんです。
買取品の中にオメガ シーマスター レイルマスター トリロジー(220.10.38.20.01.002)がありました。
レイルマスター発売60周年記念として世界限定3,557本が販売されたモデルのようです。マスタークロノメーター8806を搭載し、15,000ガウスの耐磁性能もあるとか。国内定価が¥803,000もするハイスペックモデルです。付属品もそろっているので、しっかりと整備してから店頭で販売したいと思います。
長々と商品説明をしてしまいましたが、今回の話は精密機械ドライバーのお話です。ドライバーについては今まで何度も取り上げてますが、改めてその必要性と重要性及び使い方について。今回のような品物をみる度に、今後も繰り返し書いていくつもりです。
今回譲って頂いたこのオメガ様、外見はベルトにスレ傷がいくつかある程度の美しいお品物です。ただとても残念な事にベルト調整跡がとても痛々しい状態。
時計の購入先は有名デパートの時計コーナーなので、恐らくここまでの事はしないはず。ご自分で楽しみながらベルトの調整をしていたと推測します。自分の所有物を愛情を持って触る事はとてもいい事だと私は感じます。ただ、こういう傷が増える事でその品物への愛着が薄れることもあろうかと…‥。それ故、時計のベルトをご自分で調整する際の、ドライバーの選び方の参考にでもなればと考えております。
外装仕上げや内部点検を行う前に、余りコマを全て装着します。
取敢えずドライバー箱から3本のドライバー選んで取り出し、適合性を見ていきます。以前もしつこく書いてますが、ドライバーで重要なことは「幅」と「厚み」が合っているか。ドライバーを回す技術などいりません。ドライバーを選ぶことが大切です。なのでセットした時にドライバーの幅を、そして軽く回して厚みの確認を行います。
一番上の黄色いドライバーは【幅】は「使えない事は無い」という感じの適合性です。でも画像で確認できますが右側に隙間ができており、ここで【厚み】が合っていない事が分かり、この程度の隙間でも「全然ダメ」な部類に入ります。仮にこのままネジを回すと、ネジ山のの両方の当たっている部分が曲がります。もしこのドライバーを使うのであれば、ドライバーの厚みを適正になるまで削り、先端を厚くしてから使用すれば対応が可能です。
真ん中のドライバーは厚みは少し薄い程度ですが、そもそも幅が少し足りません。これで回すとネジの中央部分がえぐれてきます。なのでこれを使うよりは上のドライバーを調節して使用した方がずっといいと思います。
3本取り出したドライバーの最後の一本が良い感じで適合してます。
ネジ山全体に負荷をかけられる状態にあるのでこれを使用する事にしました。ただ、注意が必要な点もあり、厚みが適合しているのはネジ穴上部のみになるので、「強く押し回し」をするとネジの角が崩れます。
ちょっと脱線しますが、新品の時計を購入した際、多くの方は気が付きませんがネジが接着剤で固定されている場合があり、高額品になればその傾向は強まります。
取ったネジやネジ穴を見ると分かりますが、白い粉のようなものがその跡です。接着されている状態のネジは当然固めで、合わないドライバーで回した結果が今の惨状を招いたのかも。そういえば、質屋の道具でこの接着剤を取り扱ってなかった事に気が付きました!いつかどこかでご紹介させて頂きます。因みにこの手の接着剤は熱を加える事で柔らかくなります。
という事でドライバーが決まればただ回すだけ。
赤丸で印をつけたところが私が付けた部分です。ちょこっと傷ついてますが、黄色で印をつけた私が全く触っていない部分にもネジの変形があるので、一番最初からついていたものという事にします(実際は不明…‥汗)。上部の適合性を合わせても、上から高圧力をかけるとこんな感じの変形に繋がる事があり、これが上記で触れたことです。(繰り返しますが、私が触ってないところも変形してます!)
という事で今回はドライバーの選び方について画像で説明してきました。ただ誤解があると嫌なので正直に申し上げますが、金属と金属がぶつかるので完全無傷で調整するのはとても難しい事です。手持ちのドライバーでネジ山の上の部分に適合するものを選び、そして適合性を更に調整し、できるだけ傷付けないように努力することが大切、という事をお伝えしたいだけです。調整できるのはあくまでもネジ山上部との適合性なので、若干の妥協と諦めも時には必要ですが、ドライバーの適合性を可能な限り最適にすることが重要です。私が触るお品物は「会社の商品」や「お客様の物」なので、この細やかな調整に手を抜くことはせず、常にルーペで確認しながら作業をしております。だって、傷つけたら大変ですし、それ以前にそれが仕事なので!。
(最後に)
書こうか迷いましたが、私の場合、自分のものはこんなに細かい事は気にしてません。ベルトの調整など数年に1度するかしないかですし、ネジを新品に交換しても恐らく大した金額はかからないので、自分のものを調節する時には適当にやります。外装仕上げもたまに自分でやりますが、見た目が光っていればいい程度で終わらせ、細かな傷など気にしません。今回の件についても、自分の持ち物をどのように扱おうなど個人の自由なので、決してベルト調整で傷がついている点を非難はしてません。むしろ上記してますが、自分で調整してみようと思う方が楽しいのではないかな。気分に合わせてベルトそのものを交換するとかもありですし、自分の時計の電池を交換できるとか、そういう事ってとても素敵なことだと思います。仕事としてやっているドライバー選び方が、少しでも誰かのお役に立てればいいな~と思いました。自分の大切な時計に傷がつくのは、誰だって嫌ですからね。
文章が長すぎてすみません。
本日は以上でございます。
2021年04月19日
鴫原質店の弟さんです。
今回は質屋のオークションで社長が仕入れてきたイアリングについて。お品物はこちらです。
ステキな色合いのタンザナイトの回りを、小さなダイアモンドで囲んだデザインイアリングです。話の流れ的に最初に申し上げますがこれは片方しかありません。恐らくもう一方は無くしたとか、壊したとかなのかな。
長くこの仕事に関わっていますが、少し前までは片方しかない耳飾りなど「売ろう」とさえ思いませんでした。片方しかないなら金属として溶かすことが当たり前だったのです。言い訳ではありませんが、片方しかない靴や手袋とかと同じ感覚で「商品にならない」という思いがあったのです。ところが近年、そんな固定概念をぶち壊す商品をいくつか取り扱ってきました。
例えばこちら。
当店のホームページで販売中のルイ・ヴィトンのピュス イディール ブロッサム。メーカーさんのホームページの商品説明では片耳用ピアスとして販売されています。定価は¥121,000のようですが、中古品で7万円で売ってます(よろしくお願いします!)。
そしてもちろん他のメーカーでも同じような流れが。
当社のホームページから取ってきた画像ですが、これはブルガリのイアーカフ。耳たぶではなく耳の上の方に引っ掛けるタイプらしい。販売価格は¥74,000でしたが既に販売済みです。定価が¥167,420もするそうで驚きます。これも片耳用の商品でしたが、私のようなおじさんにはイアーカフって「何ですか?それは…‥」という馴染みのない新しい言葉でした。
そしてこちらもブルガリさん。
これも当社のホームページから取ってきた画像で、既に販売済みのお品物です。ブルガリの公式ホームページでは、B-zero1の片耳用ピアスという名前で紹介されてます。
今でこそ、片耳用耳飾りという言葉は一般的になりつつありますが、最初にこの言葉を聞いた時は本当に衝撃的です。上の販売済みのブルガリのイアリングは「こんなの売れるの?」と本気で言っていたのを覚えてます。
こんな時、自分の思考が時代に合っていないことを実感させられます。そして少し前から、片方しかなくても「もしかして売れるのでは?」と感じるものがあれば、トライアル的に販売しております。
もう販売済みの商品ですがですが、当店のホームページに画像がまだ残ってました。この2つの品物は、一つ欠品したと思われる耳飾りです。ですが「片耳用」として販売してみたところ両方ともすぐに売れました。そして「そもそも両方揃っている必要が無い」というニーズがある事を悟ります。
今までは一つしかない耳飾りなど、片方が欠品している欠陥品というイメージしかありませんでしたが、それこそが固定概念だったのです。片耳用が2つあれば今まで通りの耳飾りセットになるだけにすぎません。言い方や解釈の問題になってきますが、「片方のみの耳飾り」や「片方欠品の耳飾り」と「片耳専用耳飾り」では言葉のイメージが全然違います。
ファッション的な話になれば、両耳に違うデザインを着けたい方や、特にピアスの場合は穴を開けた数が両耳で違うとか、また開けている場所が違うとか、理由は様々ですが、2つ揃っている必要が無いと考える方が増えたのかもしれません。「片耳専用」はそれらのニーズを的確に捉えた、頭の良い方が創った新しい言葉だと私は考えてます。もちろん両方に同じものを着けたいのであれば、片耳専用を2つ買えばいいだけなので、両方のニーズにも対応している点も素晴らしいことです。
そのような流れで、片耳とか両耳とかいう概念がそもそも不要で、2つあっても1つずつ販売したほうがいいのではないか、と最近では思うようになってます。
因みに市場(競り場)で片耳だけのものを買ってきたのはこれが初めてだったような気がします。
お客様のニーズに合わせて販売方法もどんどんと変化してます。そのうち、靴や手袋などの2つで1つが当たり前だった品物まで、別売りの時代が来るのかもしれません。(※来ないとは思いますが‥‥)。というか左右対称で同じデザインでなければならないという考え方や見方こそが固定概念で、近い将来は「右足用の靴」と「左足用の靴」が売られてたり、デザインも左右で違うものをお店で選ぶというような買い方がでてくるのかな(笑)。(※恐らくないと思いますが)。色々考え始めると「これもそうだ」とか「あれも分解できるよね」とキリがないので、この話はここまでにしたいと思います。
最後に「片耳専用耳飾り」をグーグル翻訳で英訳してみたところ「Earrings for one ear only」 となります。そしてこの英語を、同じくグーグル翻訳で日本語にすると「片耳のみのイアリング(耳飾り)」とでてきます。色々と書いてきましたが、一般的な感覚では耳飾りは2つセットで一つという考え方が常識で間違いないように感じます。日本語のみに与えられた素晴らしい表現方法なのかもしれませんね。
本日は以上でございます。
2021年04月15日
鴫原質店の弟さんです。
今月の質流品にROLEXのヨットマスター(Ref 16622)がありました。
今回はその付属品について感じたことがあり、そのまま書いていきます。
2006年製造(Z番)のこの子には、当時の紙の保証書が付属します。
右下の欄には販売店名とお客様住所にお名前、そして販売日がしっかりと印字されています。日本の正規代理店で購入すると、このように印刷にて明記されていたものが殆どだったような気がします。
日本の正規代理店と書きましたが、この時代の保証書は今とは異なり、なんと国によって少し違いました。
赤丸で囲った部分は保証書を発行した国番号で「410」は日本である事を表します。日本の保証書は色々と印刷されていますが、他の国の保証書だと「ハンコ」が押してあるだけとか、ボールペンで文字を書くだけとか、最悪すべてが空白とか、色々なケースがあったように思います。今では考えられないことで、少し笑えます。
以前何かで取り上げた記憶がありますが、この保証書にはこんな特徴が。
印刷された王冠マークが紫外線に反応します。光る部分と光らない部分があり、一応「保証書自体の真贋判定」の一つのポイントにもできますね。ちなみに、この紙の保証書をカラープリントした印刷物を何度か見てきました。これも今思えば笑える思い出です。
付属品に少し珍しいものが。
保証書の左下にフランス語で書かれた文面の日本語訳です。正規代理店で購入したものだからこそついている珍しい物かも。15年前は当たり前のものでも、今現在ではみる事が少なくなったのでそう感じました。そもそもにして不要なものなので、捨ててしまった方が多いのではないかな。
個人的にどうしても触れたいのはこれ。
普段折りたたんで保管する保証書の為、中央から上下に分けて印刷向きが違います。これいつみても「変じゃない?」と思うのは私だけなのかな?。
もう一つだけ突っ込みたい事が‥‥‥(許して!)。この時期のロレックスのクラスプはとても薄い造りになっています。
そして長い事普段使いしていくと、この板のようなクラスプが変形して、バックルの開閉が緩くなる症状がでてくることもありました。
そして最後に、この子についていたもう一つの付属品の一部を!。
他社の中古屋さんの説明書がついており、中古品で購入した事が判明します。その中古屋さんの取説に先程のクラスプの「直し方」が明記されていました。こんなこと書いていいのかな(笑)。因みにこの調整方法は、当店の社長の方が私よりずっと上手です。本当にずっと前から何も考えずにやってますが、壊れたことは一度もありません。ただ、一般公開しようと考えたことがないので、少しだけ笑ってしまいました。だって力ずくで曲げるだけなので、修理とか調整と言っていいものかどうか。
ロレックスの紙の保証書はこの頃を最後に姿を消します。確か2007年くらいからですが、世界でデザインが統一されたカードタイプになっていくからです。「紙の保証書」なんて昔は当たり前の事で気にも留めませんでしたが、最近では数が少なくなってきたように感じます。現状でそんなに珍しいものではありませんが、当時の付属品が複数あったり楽しかったので取り上げてみました。
本日は以上でございます。