質屋のスタッフブログ
2021年07月01日
鴫原質店の弟さんです。
今回はブラックオパールの楽しみ方の一つをご提案。お店で買取したブラックオパールリングの商品画像を作ったついでに、こんな見方もあるのでやってみてはいかがですか~という流れになります。使っている画像は半分が商品画像で、半分はこのブログ専用に撮った画像です。ブラックオパールをお持ちの方にはご興味があれば試して頂きたい事。もしかしたら自分の宝石がもっと(×2)好きになるかもしれません。
今回題材にする商品はプラチナ台にオパール2.93カラットが飾られた指輪です。正直に申し上げて昭和の香りが漂うデザインですが、海外の方や宝石好きの人が購入してくれるかもしれません。取り合えずはオパールの遊色を上手く撮影して気に入ってもらえる方を探すだけですかね。売れるかどうかなんて、最近では二の次になりました。動き続ける事でそれが結果に結びつく事があるだけです。そして私が商品画像1枚目に採用したのがこちら。
本来は赤色の遊色が撮れればいいのですが、指輪の全体像とオパールの遊色と班の大きさのバランスを考えてこれを選択しました。それと赤やオレンジの遊色があまり出ないオパールさんなので、私が個人的にいいと思う部分を撮るとこうなった次第です。商品画像は撮影者の趣味や嗜好がかなり影響しますので、他の人が画像を撮影した場合、何か違う場所の写真を撮ったかもね。写真撮影ってかなり自己満と思い込みの世界感がある仕事のように最近は感じています。
いつぞやのルビーの時のように宝石が綺麗に見える状態を探しながら撮影していきます。
通常環境でこのようには見えないので、画像自体に撮影方法を明記しておきます。誤解を招くと大変なので特殊環境である事を事前に理解して頂くことが大切かと思います。
ここからはブログ専用に取った画像です。単一焦点レンズ(ルーペ)で特定の場所に焦点を合わせ、ペンライトで様々な角度で照らした時にだけ見る事ができる現象を撮影したものです。これは商品画像には掲載できません。一般的な宝飾品としてのオパールの域を超え、鉱物として宝石を見ているので完全な私の趣味(遊び?)の世界です。
石の表面と石の内部では色味やその表現が全然異なります。不思議というか、とても楽しく眺めてました。繰り返しになりますが、石の表面よりほんのちょっと内側に焦点を定め、ペンライトで光の角度を調節して素敵な色がでる場所を撮影した画像です。目で見る事は不可能ですし、こういう現象を見る為には少しコツがいります。
この色はどこからでてくるのだろう?。真っ青でとても神秘的な色合いが湧き出るようにその形を変化させます。
繰り返しますが、肉眼でこの石を見てもこういう現象は確認できません。単一焦点で石の内部を見る事がこの世界への入り口です。この方法はその石が持つ様々な表現を発見できるので、ブラックオパールをお持ちの方に楽しみ方の一つとしてお勧めしたいことです。
今度は薄暗い場所で、ブラックオパールの内部を観察すると更に新しい発見があるかもしれません。だってこんなこと普通やらないでしょ(笑)。
この世界感においては、単一焦点レンズ(ルーペなど)と光の強いペンライトが必須アイテムです。あまり綺麗な色ではありませんが、左下の画像の色味や風景が異世界感があり見とれてしまいました。尚、左下と右下の画像はオパールの深層部を観察した時の色味です。こういう見方をしたい場合は、光の反射により色味が変化するので、光を一本に絞る事が大切です。なんだかとても同じ石には見えませんね。だって左下の画像を見て、ブラックオパールだって分かる人いるのかな(←実際の現状であり、詐欺ではありません)。
この世界感で鉱物を眺めると、通常では見る事の出来ない光が見つかるかも。
外観からは想像もできない色味がありました。言葉で表現する事は難しいですが、光の角度で輝度が変化する様子はとても素敵です。なんだか映画にもなっている人気アニメのオープニングの焔(ほのう)みたい。「私に還りなさい~記憶をたどり~優しさと夢の水源(みなもと)へ~」と曲が頭の中を過(よぎ)りました。凄くどうでもいいことですが、私はこの色が大好きです。
という事で本日はブラックオパールの商品画像を造った延長で、楽しみ方の一つを実際の現象を見ながらご提案してみました。画像は全て同じ石を環境を変えて撮影したものですが、色や光が変化して楽しめる上、「本当に同じものか?」と目を疑うものもあります。オパールの良し悪しを決める「宝石学上の基準」や「宝石の価格に影響する基準」があるのは確かですが、「いい品物」や「高い品物」だけが宝石ではありません。オパールは特に好みの分かれる宝石なので、好きな色が見れるものを手に入れて大事にして欲しいかな。自分が一番好きなものが世界で最高の物になるはずです。
尚、オパールに関して当社ホームページに説明があるのでリンクを貼っておきます(オパールの説明)。またこの指輪の商品画像が確認できるのがこちら(Pt900ブラックオパールリング O2.93 D0.96)。このリンクの先にある商品画像だけでは何とも地味な感じで売れる気がしない‥‥です。ま~ここまでやる事が仕事なので、結果が付いてくるかどうかは後の問題です。売れたら嬉しいです位の感覚かな。実際に昭和感がいい感じで漂うデザインだしね。
因みに私は、6枚目の画像に載せた色が「ギラギラ」輝くようなボルダーオパールが欲しい。50円玉位の円形に加工できる大きさで、厚みは薄ければ薄いほどいい。色味が綺麗で照りが良い宝石にいつか出会えることを願い続けています。ブラックと違ってボルダー安いし私でも買えるはず!(笑)。この仕事をしているうち(現役という意味)に出会いたいものです。
本日は以上でございます。
2021年06月24日
鴫原質店の弟さんです。
今回は試金石と硝酸と比重計を使って金色物体の金性を判別していきます。同様の案件を今まで何度も取り上げてますが、質屋の日常で実際にあった事を書いているので多少の重複はお許しください。また失敗談ではありませんが、買取現場における諦めのような部分も最後にありますので、ご興味あればご覧下さい。尚、ここでやっていることは買取成立後に同じことを写真を撮りながら再現しており、普通にやると数分で終わる事です。
今月の中旬、金のプレートの買取査定がありました。
全て同じお客様が一度にお持ちになられたもので、一般家庭の方が持っているような品物ではありません。これらは歯医者さんや歯科技工士の方々が保有している事が多い板材ですが、手書きで「K14」とマジックで書かれた物体がちょっと不思議。変な色してるし怪しい形してるし均一でないし、一度融解して何かの型に入れたのかな。この子が話の中心となるので、私が勝手に「手書きマジック君」と命名します。
やる事はいつもと全く変わりませんので淡々と進めます。買取査定なので取り合えず金性を調べないと値段のつけようもありません。刻印がないこの金色物体の正体を判明する為に、先ずは試金石に擦りつけます。
金性の高い順番に並べたかったので、最後の金属を一番左に変更しました。そして痕跡を見てみます。
慣れてくるとこの時点で左の2個は金性が高いものである事、そして右の2個は金性が低いもの、そしてもしかしたら金が入っていない可能性もある事が分かります。特に一番右側の「手書きマジック君」の痕跡はその名前以上に怪しさを感じます。
そして擦りつけた痕跡に硝酸を浸します。
金以外の不純物は硝酸で溶けていく為、金性の低い物体の痕跡はその姿を大きく変化させます。ちなみに金が入っていない場合、その姿は完全に消滅していきます。
画像の明度の問題で分かりずらいので加工した画像で比較してみましょう。
一番右の「手書きマジック君」の痕跡が大きく形を変えた事が分かります。K14と書かれていた事に嘘があるのか、又は混ぜた金属の割合(混ざり具合)が一定でなく、擦った部分の金性が低いのか、正直この時点で判別する事はできません。でも取り合えず、これら4つの物体に元素記号AUである金が比率は違えど入っている事が分かりました。金以外の混ぜ物にもよりますが、その痕跡の形状が溶けていく段階で、白っぽい煙が出てくることがあります。猛毒なので絶対に吸い込んではいけません。実際に「手書きマジック君」の痕跡からは温泉が湧き出る如く白い煙が立ち込めてました。
次に比重を計ります。試金石の一番左端の痕跡をつけた物体です。
大気中での重さが10.0グラム。水中での重さが9.44グラム。
比重=(10.0)÷(10.0―9.44)=17.85
これにより22金(91.6%が金)と判断します。
計りに載せてメモ取って、水に沈めてメモ取って、電卓叩いてすぐ終わり~。100分の1の重さ(0.01グラム)が変化するだけでエラー表示になるので、比重計の機能を使うより計算した方が断然早いです。0.01グラムなんて息を吹きかけただけで変化しますからね。そしてその要領で次は長い金色物体を調べます。
大気中での重さが40.12グラム。水中での重さが37.55グラム。
比重=(40.12)÷(40.12―37.55)=15.61
多少の誤差はありますが18金(75%が金)と判断します。
さてここからが少し注意が必要です。
試金石と硝酸の段階で金性が低いと想定している物体の比重検査です。14金を下回る場合、金の入っている割合が58.3%以下となるので、比重は混ぜ物にも影響されて安定しなくなりがちです。実際に9金や10金そして12金は比重検査での判別は非常に難しく、私ごときには可能なのかさえ分かりません。更には「手書きマジック君」に関しては存在そのものが怪しいので特に注意が必要です。
先ずは痕跡3番目のプレートから。製品化されているものなので少し安心できます。
大気中での重さが15.00グラム。水中での重さが13.82グラム。
比重=(15.00)÷(15.00―13.82)=12.71
製品である事を考えると10金(41.7%が金)のプレートなのでしょう。なんか分からんけど刻印されている文字も十金と見える気もします(←何の刻印か不明)。比重的には14金を下回っており、確信を持てるところは10金となります。
そして今回の目玉「手書きマジック君」の登場です。
大気中での重さが56.57グラム。水中での重さが52.12グラム。
比重=(56.57)÷(56.57―52.12)=12.71
偶然にも先程のプレートの比重と100%一致。その存在がとっても怪しい「手書きマジック君」でしたが、100分の1単位まで一比重が致するということは、とんでもなく凄い精度で精錬された金属だと分かります。はっきり言って偶然な訳ありません。という事は「手書きマジック君」は10金なのでしょう。
金性が低いものは特にそうですが、比重は上下にブレる事が多いです。金の他に銅や銀を合成して「41.7%」が金である事が10金の意味。つまり半分以上は金以外の何かの金属が入っており、その比重が100分の1の単位まで同じになるという事は、同じ金属配合がなされている可能性が非常に高いと思われます。そういう意味で色々想像すると、10金のプレートを溶かして型に入れたものが「手書きマジック君」なのかも。もしくはこの割合の金属が必要で、ちゃんとしたレシピがあるとかかな?。なんだかK14というマジックの文字に少し悪意を感じてしまいます。
結果的には上記の判断の通りで査定額をお伝えしました。例え手書きであっても、K14と書かれている金属(「手書きマジック君」)が10金という説明に満足する訳もなく、間を取って12金扱いで買取させて頂くことでご承知頂きました。比重は嘘をつきませんが、何よりその他で重量があるので、この「手書きマジック君」で少し損しても全部売ってもらった方がいいという判断があります。
そしてこの金属たちを溶かした結果、「手書きマジック君」が10金だと判明します。
10金と判断したプレートと同じ比重なんだからま~そうでしょうね。169,500円でお客様から購入したものを157,800円で融解してるのでマイナス11,700円なり~~~。でも他もあるのでもちろんトータルではプラスです。失敗というより想定の範囲内かな。っていうか「手書きマジック君」はどうしてあんな形や色をしていて、マジックで「K14」って書かれていたんだろう。損した事などはどうでもよく、それだけが気にかかります。
今回のように一つで損をしても、その他の全てを買った方がお店にとって得な場合があります。もし「手書きマジック君」でもっとケチったら(←一応14金を12金にしてるので)お帰りになっていたかも。ましてや当店で(しょうがなく)12金だったら買えると判断したこの物体を、他の店では14金と判断するかもしれません。だって意味は分からないけど「K14」って書いてあるし!。売却されるお客さまにとっては、値段が高い方がよりいい店で、その品物の本質などは無関係なものです。
最後に、当店では意図的に融解と再形成をおこなった【ゆだまり】と呼ばれる金属の塊は、基本的に売買しない事にしてます。元の形を熱で変形させ、ただの金塊にした時点で、その元の形に何かしらの悪意や犯罪が絡んでいる事がとても多いからです。今回のこの「手書きマジック君」も考え方によれば【ゆだまり】の部類に入る可能性もありますが、とても精度の高い精錬をしている事が想定される上、他の金属プレートと同時持込だったので取り扱いました。もし仮に「手書きマジック君」だけの持ち込みだったら査定もしないと思います。だって変な色してるし怪しい形してるし均一でないし、何よりもマジックでK14って書いてあるし、その姿だけを見ればどう考えても普通でないと判断するのが妥当な事。いったいこの「手書きマジック君」を造った目的は何なのだろう?。知っていたら誰か教えて下さい。
本日は以上でございます。
2021年06月18日
鴫原質店の弟さんです。
今回は少し前の事ですが店頭で買取した腕時計について。
こちらは1987年に日本国内で限定発売されたパテックフィリップ カラトラバ。グレーとシルバー、そしてこのアイボリー文字盤のラインナップで各種50本、合計150本の限定販売品という非常に希少価値の高い品物のようです。素材はステンレスで型番は「3923A」。一般的に発売されていたカラトラバ「3923」は金無垢なので、限定品という付加価値はあるものの、ステンレス製であるこの品物がお客様にどのように評価されるのかが興味深いところ。ケース直径が31.5ミリの小ぶりの時計で、腕時計の巨大化が進む今の現状ではレディースサイズに感じてしまいますがメンズ用です。
売って頂いたときの状況はというと、査定金額を提示して一度はお帰りになられましたが一週間後に再度来店されて、前回の値段なら売りたいという話で商談がまとまりました。希少な品物である事は間違いないので、多くの店舗で見積もりを取られたのでしょう。他店とどのくらいの差があったのかは知りませんが、お譲り頂いて良かったです。
ところが買取させて頂いた後に【時計が壊れている!】事に気が付きます。事前の見積の時は何の問題もなかったらしい(←他の人がやったから知らない!)のですが調子が悪い。確認しない方も悪いが、一体どこの誰が壊したのか(涙)。それに壊れてるものを同じ値段で買っちゃダメじゃん(哀)。
そしてここからようやく本題に。上記のような経緯があり、こちらのお品物は正規代理店へ入院(メーカーオーバーホール)となりました。
入院費は消費税込みで228,800円なり~~~~~~!。世界が誇る時計メーカー様の正規メンテナンスなので請求される金額のみが妥当な金額。保証書が無い品物ですが、メーカーでの正規メンテナンスという安心感により莫大な付加価値が加わり、その商品価値は一段と高まったことでしょう!‥‥‥‥(本当か?)。
ベルトもピッカピカの未使用品になりました。
裏にパテックフィリップのロゴが刻印されたクロコダイル製!。クロコダイルのベルトは安いもので5~6千円で買える時代に、このベルトはなんと60,500円。このロゴの刻印にそれだけ付加価値があるという事ですね。
パテックフィリップって
「なんか」凄いね!。
そしてケース仕上げが47,300円!。当店は一般的なケース仕上げを通常1万2千円(税抜)でやっているので、この金額には少し驚きました。何か特殊な事があるのかなと仕上具合を見ても、特に変わったとこは無いような気が。
形状を変えず薄く表面を削って、商品のベースを崩さない感じのタッチかな。私も簡単な仕上げは自分でやるので「この傷は消した方がいいかな~」とか興味深く見てしまいました。この仕上げに関しては、パテックフィリップ正規代理店がやったという事実を証明する【領収書】がとても(×3)重要です。この領収書が無ければ、「私が仕上げしたもの」か又は「当店提携工房が仕上げしたもの」か「正規店で仕上げしたもの」かなんて判断する方法があるのかどうか。
とはいえパテックフィリップの正規メンテナンスで仕上げした事実がとても重要で、それは私の感覚ではなく一般認識だと思います。だからこそ同じ仕事でも高額に設定でき、その価格設定に対して誰も疑問を感じません。それこそ値段に対して疑問を頂くような方は、パテックフィリップのお客様を続けることはできないのかも。
パテックフィリップって
「やっぱ」凄いね!。
時計修理に限らずどんな業界にも言える事ですが、同じものを販売(提供)するにも、利益をより多くとれるということはとても大切です。そしてまた、支払側が満足し納得するもの(事)であれば「高い」という感覚さえありません。本当に凄い事ですが、それこそが長年培ってきたブランド力そのものであり、他では変わることができない存在であるからできる事なのでしょう。今回はパテックフィリップの値段設定を見て色々と考えてしまいました。
どんな業界であろうと、このような独自性を持つことが重要なはず。そしてふと自分に当てはめてみると、一体何ができるかなど考え込んでしまいます。ブランドそのものに価値があり、その価値ある品物の中古品を販売している私たちが持てる独自性‥‥‥‥、そんなのあるのだろうか。ましてや質屋という事に関して言えば価格競争以外には、一般的ユーザーが望むことがあるのだろうか。安心感や昔からの付き合いとか周りからの評判とか、確かにそういうものはあるにせよ、むしろ価格競争で勝負した結果として周りの評価がある気がしてなりません。
インターネット経由の販売が主流になりつつ今、色んな事が変化しているので今一度何か見つけないといけないのかもしれませんね。なんだか思考が纏まらないし、だらだらしてきたのでこの辺で終わります。最後に、昔からよく知っている事ですが今回は改めて思い知りました。
パテックフィリップって
「ホント」凄いね!
本日は以上でございます。