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ルースダイアモンドを査定する際の作業紹介

鴫原質店の弟さんです。

今週初めに、1カラットアップのダイアモンド3つと他にもいくつかの宝石を査定させて頂きました。そのうち何個かは譲って頂き、その中にはルースダイアモンドも。今まで触れた事が無いような気がするので、今回はルースダイアモンドの買取値段を決める為の作業のご紹介をさせて頂きます。お客様に聞くところによると「品物を預かって査定する」店舗が多いとのことなので、当店ではこのようにして「ちゃんと査定してる」という宣伝にでもなれば(笑)。尚、査定には最低でも1つ10分程お時間を頂きますが、こんな事してれば10分はすぐだよね~など的な温かい思考で見て頂きたいと願います。

売って頂いたダイアモンドには鑑定書がついていました。ルースダイアと鑑定書バブル期に300万円で購入したというアピール度が不気味なオーラ―を感じます(笑)。そしてまた「E、VVS1、G」という表示は、不慣れな人には大きなプレッシャーになるかもしれません。

私は品物に偏見を持たない為、鑑定書を見るのはグレードを決めてからにしています。鑑定書のグレーディングただ今回は外側にメモでしっかり書いてあったので最初に見ました。1.003カラットの「E VVS1 G」で蛍光性「BLUE」ですか。中央宝石研究所が発行してるものですが、昔の鑑定書は当てにできません。(その理由は省きます・・・。)そしてまた、これがこのルースの鑑定書である証拠などどこにもありませんので、ハッキリ言って無意味です。「見なきゃ良かった」とマジで思います。

取り合えずブログ用に1枚写真を撮影しました(買取後です)。ダイアモンドの大きさを定規で計っている画像1カラットと言っても直径は6ミリ位の大きさです。見てすぐ分かるカラーグレードですが、見た目的に「Eカラー」は絶対取れないと思いました。鑑定書では「E」って書いてますが、良くて「Fカラー」悪くて「Gカラー」という判断をします。「何が根拠だ?」と聞かれるならば、「見てすぐにそう思ったから・・・」ですかね?。お客様から査定値段の意味や理由を聞かれればきっちりと説明させて頂きますが、GIAによって定められている国際的な品質基準であるマスターストーンと比較するまでもありません。

鑑定書がついていてもルースダイアと鑑定書を関連付けるものはありません。それ故に、鑑定書など無いものとしてカラット計で重さを測ります。ダイアモンドの重さを測っている画像愛用の「精密ポケットスケール」君によると、このダイアは1.02カラットの重さという事が分かります。機材が壊れているのか、品物が違うのかなど分かりませんが、1.003カラットの鑑定書は果たしてこれの物なのだろうか?と変な先入観が芽生えます。こんなことを何度も経験していくと、鑑定書は最後に見た方が「変な思考が働かずに判断がスムーズになる」というのが私の思うところだったりしてます。

次に顕微鏡でダイアモンドの内部を観察。ダイアモンドを顕微鏡で4つの光源でみた画像無灯→白色蛍→赤色灯→両方点灯と光のパターンを変更して内部をみますが、インクルージョンは発見できません。この時点では「VVSが取れる」そしてまたカットも「GOOD」が取れるという判断しました。VSクラスだと結構直ぐに何か見えるものですが、VVSの理由を探すのは時間がとてもかかるので深追いしません。この辺は完全な視認検査なので慣れが必要です。

そして疑うべきはⅡ型ダイアモンドの可能性。(Ⅱ型の説明は省きます)宝石鑑定装置GIA iD100で鑑定している画像内包物(インクルージョン)が極端に少ない合成ダイアモンドの登場により、天然の品質が優れたダイアモンドを見ると合成を疑う変な時代になりました。この件に関しては「見ても分かるものではない」ので、天然ダイヤモンドと合成(HPHTおよびCVD)ダイヤモンドを区別する宝石検査装置 「GIA iD100」君に判別を依頼します。その結果は「OKよ~~」との事。この機械が無いと良質のダイアモンドに手を出せる環境ではないので重宝します。

次に蛍光性の確認をします。鑑定書では「BLUE」とありましたが、昔の基準過ぎて私には意味不明。暗い部屋でダイアモンドをブラックライトで照らした画像暗い部屋(金庫)でブラックライトで照らし蛍光性を確認すると、「最悪ストブル(Strong Blue)いくかも」って感じかな。Mediumで収まってくれたらラッキーぐらいで考えます。

という流れで「1.02カラット」「G VVS2 G」「Strong Blue」は最低でもでるという判断により、これよりもいいダイアモンドである事を想定して、相場を調べた上で査定額を決定します。自分がどのように思うかなど全く無意味な思想で、鑑定機関がこのダイアモンドをどう評価するかを想定し、リスクのギリギリ攻める事が査定金額に大きく影響してきます。ダイアモンドの査定額が店舗によって異なる一つの理由はリスク許容度かも。安い金額だったらアルバイトでも言えますからね。

ダイアモンドの買取ってなんか凄そうなイメージがあるかもしれませんが、正直言って私個人は大したことをしておりません(笑)。見てて分かる通り「機械だより!」な部分が多いのです。「GIA iD100」君がいなければⅡ型(簡単に言えば人工合成ダイアモンド)を掴んでしまいます。愛用の「精密ポケットスケール」君にはいつもお世話になってばかりで、ルースの重さを測るのには欠かせない存在。愛用の「顕微鏡」様はルーペでは見えない何かを鮮明に見せてくれる欠かせない存在です・・・・、なんせ倍率40倍ですから!。ブラックライト様が無ければ、ダイアモンドの内に潜む青さ(蛍光性)など気づきさえしません。こんな道具を次々と仕入れなが最新の情報を常に与えてくれる環境がとても重要で、それってGIA GG(宝石鑑定士)の社長様が作り出した環境なんですよね~。それを理解しているのではっきりと「私は大した事をしてない」と言い切れたりもします。

上記の通り、機材が無いと現在の環境下でダイアモンド査定するのはとても難しい事です。査定するのに「品物を預かる」という店舗が多いのもそんな理由なのではと想像してしまいます。とはいえこのような機材は高額品が多く、ダイアモンドの売買で得られる「粗利」がある程度必要である理由でもあり、その辺はお客様にご理解も頂く必要があるのかも。なので言い訳ではありませんが「1点1点お見積させて頂きます」という姿勢を徹底してます。他よりも査定額が良かったら売ってください!と笑顔で頑張る事が大切かな(笑)。

尚、各種機材についてはブログを始めた頃に紹介しておりますので、ご興味があれば過去ブログをご覧ください。いつもですが話の論点が曲がっていく点はお許しを!。本日は以上でございます。

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