鴫原質店の弟さんです。
今回は前回のブログと同じように昨年の思い出話です。一番最初は電話にて、父が他界し家を整理しているが、品物が多いので出張買取が可能かどうか、と問い合わせがありました。基本的に出張をしていない旨をお伝えしたところ、時間がある時に色々持って来店頂ける事に。
出張買取をするところなど沢山あるはずなので、なんだか不思議な会話だったという印象がありました。その数日後お客様にご来店頂き、実際にお会いしてお話しした時に「安心できそうなところを選んだ」と言って頂きました。完全に当店で品物の選別をすると決めていたそうです。お会いしたこともないお客様にこのように言って頂けるのは何故なのか不思議に思います。とてもありがたい事なので、誠心誠意対応させて頂くのみです。
そして様々な遺品をゴソッと持ってきて頂き、お値段が付くものは見積として金額をお伝えしました。貴金属(金のネックレス)の値段は喜んで頂けましたが、値段が付かないものも沢山ありお持ち帰りになった品物が多かったです。
値段が付かない品物の一つにこちらがありました。鉄道が大好きな方だったようです。
亡くなったお父様のお話をしながら中身を見せて頂きました。2000年の新年をJR本塩釜駅で迎えられたのかな。本当に好きだったのでしょうね。そんな話をお客様と長々としていました。新年の1分前に切符を購入し、1分後に切符をまた購入したのかなしら。それともこういう商品として売られていたのか?。つい色々な事を考えてしまいます。
お客様にとっては色々な思い出があるコレクションのはずです。子供の時に乗った新幹線は確かにこの色でした。状態も色も綺麗に残っており保管状態の良さが分かります。お客様の為に何とかお金にできないか色々と調べてみるも、ヤフオクなどで100円で取引された履歴を確認し、仕事としては扱えないことを悟ります。
「本当に凄いものだと思いますよ」と本心からお伝えしながら、趣味の世界であり価値観の違いもあるので、古物の商品としての買取は難しい旨を伝えます。「金銭的価値」と「品物の価値」が違う事をやんわりと申し上げ、好きな方にはとても価値があるものであることも補足してました。
すると「お兄ちゃん電車好きでしょ!これ、あげるね」と(実話です)。私は切符に興味を示したのではなく、昔の仙台駅の写真で飾られた入場券を興味津々で拝見させて頂いており、後学の為、携帯電話で2枚ほど写真を撮らせて頂いたのがきっかけだったのだと思います。ただ貰うのは申し訳なく「記念にとっておいた方が」とお伝えましたが、「あげるよ!誰かすきな人いたら譲ってやって」とのことでした。
そんな流れで私の机の引き出しに保管されている切符のご紹介です。こちらは43年前に建てられた(らしい)現在の仙台駅を記念して発行された新駅開業記念入場券です。この券には明治27年に建設された仙台駅の写真が掲載されています。当たり前の事ですが駅の前には道路もなく、そもそも自動車があったのさえ分かりません。歴史学的には日清戦争が勃発した年号です。
入場日の日付が同じなのでこちらもセットのようですね。裏に昭和25年に建設された仙台駅という説明がありました。賑わいも感じられるし、奥の方には建物もいっぱい見えるので私が想像できる駅っぽさがありますね。自動車も沢山あり何故だか意味もなく嬉しい思いがします。
そしてこちらもセットなのでしょう。まさに今の仙台駅です。私にはこの駅の記憶しかなく(←当然ですが)、この駅が既に建築40年以上経過しているという事を意識したことがありません。いつかこの駅の建て替えの時期が来ることを考えたこともなかったので、この入場券をマジマジと見て、色々と想像していたのが今回のきっかけで間違いないと思います。
そんな流れで私の手元に保管してあるこの歴史ある入場券ですが、「誰か好きな人がいたら譲って」も言われているので、誰かの手に渡すのが私の役割となりました。こういうものに興味を示す方がいたら、譲ってもらった経緯を含めて差し上げたいと思っています。手渡し限定で!。ただ事前に申し上げますが、発行数も残存数もとっても多く、正直言って今現在珍しいものではなさそうです。ヤフオクで200円で売ってますから(涙)。
人と物を繋げることを生業としている質屋ではありますが、金銭的価値が絡まなくてもお客様に差し上げ、または譲ってもらったり。頻繁にはある事ではありませんが、たまにあるからこそ記憶に残る、そんな出来事のご紹介でした。なんだか昔ながらの質屋っぽい話だ(笑)と感じます。
本日は以上でございます。