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真珠のミキモト

鴫原質店の弟さんです。
前回クレサンベールについて書いたとき、僅かな関連性を感じてミキモトについても調べました。私的に最後の方で共通する事に辿り着いていたのでサラサラと書いて見ます。私見であることと、誰に対しても悪意がない事をご理解下さい。

私の場合ですが、この業界に入って数年間位は「ミキモト」というブランドは知っていても、今ほど高額な値段で取引されてもいなかったので、一流ブランド的な印象はありませんでした。
(←無知の上です、本当すみません!)

しばらくして、私の中のミキモトに関するブランドイメージが激変した出来事がありました。質屋の研修旅行的な企画で、会社の経費でアメリカに行かせてもらった時のことです。内容的にはロサンゼルスの質屋見学とアメリカの中古ブランド通販会社の見学、そして最後にアメリカ宝石学会の権威であるGIAの見学、及び「記念に」一応講習を受けるというものでした。 花玉真珠花玉真珠その時の賞状?お土産?は大切に記念品として持っております。

通訳の方が館内の様々な説明をしてくれましたが、一画にマベパールが形成される様子を実物で展示してありました。「偉大な研究者がパールの養殖を可能にした」的な説明と「日本のミキモトが真珠の常識を覆した」等の説明があったのが猛烈に印象に残っております。アメリカ宝石学会の権威であるGIAのラボで、日本のミキモトの説明を受けるとは思いもよりませんでした。海外から見れば、日本のミキモトはとんでもないハイジュエリーブランドなんですね。この事を自覚している日本人はきっと少ないはずです。

店頭にあるミキモトのパールを実際に見てみます。ミキモトの真珠ミキモトの真珠真珠の大小に関わらずとにかく丸い!そこがとても凄い事です。
同じく当店で販売している新品の花玉真珠を。花玉真珠花玉真珠パッと見ると綺麗ですが、ミクロの世界ではこのような「えくぼ」や「しわ」がありますね。もう一度、店頭で販売しているミキモトの指輪のパールを。ミキモト真珠ミキモト真珠やはり徹底的に丸いのです。本当に凄い事です。店頭で売っておりますので、是非ご検討の程、よろしくお願い申し上げます。

こんなに凄いミキモトの真珠は、実は養殖の真珠です。ミキモトのホームページから言葉を借りますと、本来、天然真珠は1000個の貝の中に1個、あるかないかという大変貴重で高価なものだったそうです。ましてやそのなかで「真円」で「巻きが厚く」「えくぼがない」真珠は、本当に奇跡的な存在なのでしょう。それ故に昔から海産物ではなく宝石として扱われております。

そしてミキモトさんはパールの養殖に世界で初めて成功します。パールの養殖方法なども知ることができるのでご興味がある方は公式ページを見て下さい。その後は、養殖されたパールを贅沢に使用したジュエリーを販売し、ジュエリーブランドとして大成功を成し遂げました。

そして当然ですが反発がきます。
(以下ミキモトのホームページより全部抜粋)
真珠の養殖を1893年に世界で初めて成功させ、歴史へその名を刻みました。「日本人の真珠商人が扱っている養殖真珠は、天然真珠の模倣品であり、それを売るのは詐欺商法だ」と伝える記事が、1921年、ロンドンの新聞に掲載されました。

パリでも養殖真珠に対して疑いの目が向けられ民事裁判となりましたがMIKIMITOは勝訴を勝ち取りました。この「パリ真珠裁判」をきっかけに、養殖真珠とMIKIMOTOは世界に広く認められたのです。
https://www.mikimoto.com/jp_jp/brand-story

インターネット上の色々なページを見ると、簡単にいえば「天然真珠と見分けがつかない養殖真珠を売る事」にヨーロッパの宝石商が反対し対立したという感じに見えます(事実を知りたい!誰か教えて下さい)。結果を見ると、「ミキモトの養殖真珠は天然真珠と全く同じである」ことが世間一般に知れ渡り、あの有名な発明王のエジソンさんも「これは養殖ではなく真の真珠です」と手紙を残したそうです(ミキモトの公式HPに載ってました)。

ただでさえなかなか見つける事の出来ない天然真珠の中から「大きく」「真円で」「巻きが厚く」「色がよく」「えくぼがない」という真珠を見つける可能性の低さを考慮すると、天然真珠の素晴らしいものは奇跡そのものに違いありません。それは、天然宝石の希少性という高価な宝石の条件に当てはまりますね。

ミキモトの養殖真珠は本当に素晴らしいものですが、人工的に造り出すことができるものであり、そこに希少価値があるのかという疑問は残ります。そして今までできなかった養殖真珠を造ることで、天然真珠の意味合いや価値を案じた宝石業界から多くのバッシングを受けた可能性も想像できます。とは言え、ミキモトジュエリーの中古価格は年々上昇しております。これはミキモトのパールの評価はもちろんの事、ミキモトというブランドが支持されているからだと私は思います。


養殖技術の発展により良い真珠を見る機会は多くなりました。そして値段もどんどん安くなっております。仮に最上級のパール2つを見比べて、その一つにミキモトのパールを加えたとしても、それを見分ける事はできません。パールに名前が掘ってあるわけありませんし、パールの最上級の基準が満たされているものに優劣はつけれません。ただ、ジュエリーのような創作物として見た場合、大小全てのものでこんなに素晴らしい真珠を用意する事こそ難しく、ミキモトジュエリーの大きな特徴がそこにあるのではないでしょうか。

歴史上の人たち(エジソン)が生きていた頃から世界の一流ブランドとして君臨していたミキモトだからこそ中古市場でも大きな価値があるのかもしれません。前回のクレサンベールの時も書きましたが、「人々が創る価値観」に対応して中古品の相場は決まってきます。人工だろうと天然だろうと何だろうと、人気があり、数が少ない物であれば否応なしに値段が高騰していきます。

私は宝石業界に浸かってさえいない、小さな質屋の従業員でございます。この前は目の前のクレサンベールの色合いをウキウキと楽しんでいた人間です。あるかもしれないし、ないかもしれないしけど、もしかしたらクレサンベールが世界の一流ブランドで使用される!とか、芸能人のガクトさんをエグゼクティブオーガナイザーに就任したグロウンダイヤモンド(説明は省きます)が今後の宝石業界の主流になるとか?。無知ながらに色々な可能性を想像してしまいます。一体どうなっていくのだろう。

私としては、世間一般が認める価値観に敏感であり、リユース業界の対応なども眺めていきたいと考えております。科学技術の発展がジュエリー業界にどう影響を及ぼしていくのかは、利用される皆様が決める事だと思うので、私はどう思うではなく、人々がどう思うかを考えることが必要なのでしょう。そこに合わせて淡々と仕事ができたらなと思います。

最後に脱線して追記です。クレサンベールクレサンベール「このアレキサンドライトは天然石ですか?」と聞かれても、私は見ても判断がつきません。極上もののアレキサンドライトかクレサンベールのどちらかだと思いますが、科学的検査を有料でしてみましょうか?と答えます。インクルージョンが見られれば迷いもしませんが、どこからどう見ても綺麗すぎます。

同じように、極上の大きなパールを一粒のみ見せられて、「これは天然の真珠ですか?養殖の真珠ですか?」と聞かれてた時はとりあえず核があるかを確認します。真珠に穴が開いていればすぐに確認できるはずです。もし穴が無ければ、有料でX線検査をして核があるかどうか調べられます。でも「ミキモトのパールですか?」と聞かれても私には判断がつきません。使われている素材などのトータル判断は可能だと思いますが、パール1個の判別か‥‥‥。方法あるのかな?本気で調べてみたいかな。いつかミキモト真珠島に見学に行きたい!と思いました。

宝石って難しいですね。
本日は以上です。



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