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遺品(セルロイドの髪飾り)

鴫原質店の弟さんです。

今日はちょっと思い出話、昨年の8月の事です。「どんな品物なのか鑑定して欲しい」ということで、ご年配の男性が大きな荷物をお持ちになりました。倉庫の整理をしていたらでてきた品物で、随分前に他界したお母さまの遺品という事です。買取希望ではなく、この品物が何なのかをお知りになりたいという物言いでした。

その品がこちらです。沢山の髪飾り沢山の髪飾り専用ボックス3つの中に綺麗な髪飾りが沢山あります。写真の右上に偶然映り込んだ家帳(A4)から、髪飾りの大きさと全体のボリュームが伝わればいいのですが。

その見た目から女性用の髪飾りである事は想像できます。髪飾りの見た目髪飾りの見た目ですが私は実際に使用されている風景を見たことがありません。私が想像したのは時代劇物のドラマで見るシーンばかりでしたが、ご年配のお客様のお母さまの品物ということであれば、もう少し後の時代のお品物なのかな。

社長さんが素材を調べてくれている時間に恐る恐る品物を確認していきます。髪飾りの装飾部分髪飾りの装飾部分か細い棒状の装飾部分は軽く押しただけで折れてしまいそうで怖い。とても細やかな装飾品でした。

細かに装飾されたパーツは部分的に稼働してその見た目を変える事が可能なようです。髪飾りの装飾部分髪飾りの装飾部分なんとも華やかですね。でもプラスチックのように見えます。

中には金属製のパーツも。髪飾りの装飾部分髪飾りの装飾部分ピンク色のお花と鶴が華やかでかわいらしい。

そんなことをしている間に素材の判別が終わります。この素材なセルロイドということです(なんだそれは?)。当店の宝石鑑定士は本当に博学です(笑)。

このセルロイドという素材はニトロセルロースと樟脳を合成し造られた世界初のプラスチックということ。製造が開始されたのは18世紀中ごろからで多くの品物が生産されたそうです。ただ、素材の特徴としては可燃性が高く燃えやすいようで、170℃以上で自然発火。世界中で問題視され実際に事故(火災)などもあったのでしょう。日本でも消防法で第5類危険物として規制対象に指定されており、量によっては消防署に保管の届け出義務があります。その他にも色々と素材独自の問題があり、新たなプラスチック素材が開発された今時分では、殆ど使用されなくなっている素材のようですね。(勉強になります)

セルロイドという素材で造られている髪飾りか。どんな場所でどんな風にどんな方が使用されていたのか。時代劇とか幕末とか、最初はそんなことばかり想像してウキウキしてましたが、ふと祖父から聞いていた話が頭をよぎります。昔の話をするのが好きな祖父は、たまに仙台の赤線地帯の話をしてました。もちろん質屋とこの赤線地帯に関連してのお話です。今では信じられませんが、売春防止法(昭和33年)という法律が制定される前まで、仙台市中心部のとある一角は遊郭街だったそうです。今でもその地名や町並みはそれを垣間見る事ができ、場所の特定も興味さえあれば容易です。事実など分かりませんが、この品物からそんな祖父から聞いた風景を思い浮かべました。

話がそれましたが、お客様へは「素材とその特徴」「女性用の髪飾りであること」、そして現在の中古市場としては大きな価値はない事をお伝えしました。そしてこのご年配のお客様は「ありがとう。お手数かけたね」と言って下さり、「これ、置いていっていいかい?」とおっしゃります。全部実話で昨年8月のお盆の出来事です。お金の問題ではなく処分してくれというのがお客様のご要望です。その後は少し色々ありましたが、お客様はこの髪飾りを玄関先に置いていかれました。

何となく時間があったら書いて見ようと思い、写真だけ取っていた今回の出来事。ただ書き進めていたら、相変わらずコロコロと話が変化し「なんだかな?」という感じになってきました。(セルロイドの話じゃなかったのか…)。一度脱線するとそっちの話にどんどん思考が食い込むのでもう終わります。

ただ、物からその時代背景、そして人と物の関係などを想像し、とても印象に残っている品物と出来事でした。質屋ならではなのかもしれませんね。

本日は以上でございます。

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