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ダイアモンドのクラリティ(幻の線)

鴫原質店の弟さんです。

先週初めに0.31カラットのダイアモンドリングをお売り頂きました。ダイアモンドを買う事は当店でも珍しい事ではありませんが、そのダイアモンドに関連して色々とありましたので2回に分けて書いていきます。譲って頂いたダイアモンドリングはこちらです。買取したダイアリング買取したダイアリングもう分解してしまいましたが、最初はちゃんとセッティングされてある状態でした。

初めてご来店頂いたお客様に「買取の見積」という事でこちらを渡されました。ルーペで一見すると、カラーもクラリティもカットも良さげなダイアモンドだとすぐに分かります。汚れによる視認性の悪さが査定額に影響を及ぼすので、「洗浄してもいいですか?」とお客様に確認し、了解を得た後に洗浄。そして顕微鏡をのぞき込んでグレードを決めて値段を決めていきます。

この時の私の初期判断ではこんな感じです。
「カラーはF以上」
「クラリティーはVS2が取れそう」
「カットはグッド以上、ファセットが厚くその上が取れるかどうか」 
「ミディアムくらいの蛍光性あり」


自分の判断で不安定要素のカットの部分が値段に影響するので、1人で悩まず社長に「これいいもんっすよ」伝えと判断基準を伝えます。悩んだ時点で自分では決められないことを悟る事、そしていくら悩んでもお客様を待たせるだけなので、決められない場合は人に決めてもらいましょう!。そしてカットの部分を見て下さいと社長にお願いすると、当社の宝石鑑定士は「ベリーグッド取れるね」というので、その基準で値段を決定しお客様に査定額をお伝えしました。その時のお客様の反応が「ありがとうございます、それでお願いします」と少し不思議な反応。とても喜んでおり、他の店で相当安く言われたのかな?などと思った事が記憶に鮮明に残ってます。

購入後はソーティングをとる為に、すぐに上のようにバラしましたが、このダイアモンドを眺めていた社長夫人から「大きなキズっぽいのがあるけど大丈夫ですかね」という感じの言葉が!。お客様も値段に大変喜んでたし、私にミスがあった可能性が大いにあり、はっきり言ってこういう時は恐ろしく焦ります。

急いで顕微鏡にルールにしたダイアモンドをセッティングしてのぞきます。顕微鏡で覗いたダイアモンド顕微鏡で覗いたダイアモンドでも最初に認識していたインクルージョン以外は見つける事ができません。もちろん後からこうやって探している事自体がダメな事なのですけどね‥‥。

私の場合はキューレット(一番底)にピントを合わせ、テーブルまで引き上げていくようにインクルージョンを探します。普通に読んでも意味が分からない文面に思えるので解説すると、顕微鏡やルーペは基本的に単一焦点です。単一焦点の意味合いは焦点距離が一つだけという意味で、例えば顕微鏡の場合、ピントを合わせた1mm奥(手前)でもよく見えません。そのゆえに、単一焦点の拡大鏡で見る場合は、全体の厚みを面の組み合わせとして一つ一つ確認していく必要があります。それを私の場合は一番下の面(キューレット)から一番上(テーブル)まで引き上げていく方法をとっているという意味合いですが伝わりますかね?(くどくてすみません)。因みに一番下から覗くのは、ダイアモンドの外部の後ろについた埃をインクルージョンと認識しない為です。セッティングされた状態のダイアモンドは汚れやら埃やら、洗っても落ちないものが沢山ありそれを誤認しない為にこのようになりました。

一応最初から認識していたインクルージョンがこちら。ダイアモンドのインクルージョンダイアモンドのインクルージョン階層が違う高さに小さくあります。でも私にはこれ以外に見つける事ができません。それ故にクラリティグレードの判断が「VS2が取れそう」なのですが。

そして大きな傷が「どこら辺にあるか教えて~」と聞くと「テーブルにあるように見える」というので焦点をテーブルに合わせて顕微鏡を覗いてみます。テーブル付近に見える線テーブル付近に見える線明らかに何かがあるのは分かりますが「これなんだろう?」というのが初見の印象。キズではなさそうに見えます・・・・・、というよりモース硬度10のダイアモンドにこんな傷を付ける事かできるのだろうか?。というかダイアモンドの表面にはありませんし、中に焦点を合わせても見えません!。取敢えず私にはよく分からないので、先に「何か分からないけど気が付かずに買ってしまった。ごめんなさい」と社長さんにお詫びをいれます。間違いがあった時点で損失が確定しますので、間違ったらすぐに謝りましょう!。これをマイナス評価に入れればもっと安い値段の提案になるので、私の間違いであることは確実です。

その後、社長にもこのダイアモンドを確認してもらいました。そしてこれは「結晶構造のゆがみ」であると教えられます。「何でしょう?それは?」。ググってみると論文のようなものばかりがでてきて、はっきり言って私には理解できません。詳しい説明を受けましたが、「何面体の結晶がどうとか」理解不能‥‥‥聞きながら頷いて、左から右に話が抜けていきます。無知な私なりにできるだけ簡単に要約してみると、「ダイアモンドの結晶構造が形成される過程で、何らかの理由によりその構造が歪んだ為に見る事のできる現象」という感じでいいのか?。(※私は宝石の専門家ではありません!ので違ってたら申し訳ない‥‥‥。)

その後、このゆがみで見える現象については、クラリティグレードに影響しないという言葉に安心してもう一度眺めます。結晶構造のゆがみ結晶構造のゆがみ本当に不思議。透明なダイアモンドの内部で屈折した線のようなものがみえ、何故それがテーブルに焦点を合わせると見えるのか。内部を覗いても何にもないのにね。2枚目と5枚目を見比べるとこの感覚が伝わるはず。光の屈折なんかも影響してるらしいが本当に不思議だ。

今回気が付かなかったのは、ダイアモンドを見る時の癖が大いに関係します。基本的にインクルージョンを探す目的でテーブルをマジマジとみることはありません。最初にテーブルに焦点を合わせて奥の方へ進んでいってれば最初に気が付いたかもしれません。言い訳がましいですが、よく見てないのは事実なのでしっかりと反省します。

今回は画像を拡大してダイアモンドをご覧いただきましたが、実際の大きさはこんな感じです。撮影環境とダイアモンドの大きさ撮影環境とダイアモンドの大きさ直径5ミリくらいのダイアモンドの内部に点のような内包物があり、それを見つけるというのがグレーディングのお仕事です。当たり前ですが肉眼で見えるものなど何一つありません。台座にセットしてある状態でインクルージョンを見つけるのにも慣れとリスク覚悟が必要な場合が多いですね。今回は失敗した事実を反省し、結果的に損害がなさそうなこと、お客様が喜んでくれたことをプラスに捉え良かったことにしましょう!!。

などと締めくくってますが、この件に関しては続きがあります。次回の更新でそちらを書いていきます。本日は以上です。

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