HOME > 質屋ブログ > カルティエ サントス100クロノグラフの模造品ベルト

質屋ブログ

カルティエ サントス100クロノグラフの模造品ベルト

鴫原質店の弟さんです。

今回は数日前に買取させて頂いた腕時計について。店頭で買取したベルトが2本ある腕時計こちらはカルティエのサントス100クロノグラフ(型番W20091X7)という腕時計で、本来ついていた茶色のメーカー純正ベルトを、お客様が自分でベルト交換をし大切に使用していたようです。茶色の純正革ベルトはとても綺麗なので、再販する時に売りやすい商品になりそうかな。

そしてパッと見て違和感を覚えるこのベルトが今回の話の主役です。腕時計についているベルトこの程度の倍率だと確信はできませんが、ルーペなどの倍率で見ると出来の悪い模造品であるとすぐ分かります。この業界で仕事をしていると正直言って偽物など日常的に見るので、いちいち取り上げる事はありません。そしてまた下手に解説すると、その部分を修正して模造品がでてくるので、一般的に偽物情報は開示しません。インターネットに掲載されている「偽物の情報」などは既に昔のもので、誰もが見れる情報などには価値がないのが実情です。そういう理由もあり、「本物はこうだ」とか「偽物はこうだ」は色々面倒なのでやったことはありませんが、今回は見比べる事ができるので、「こんな部分が大切」的なポイントを見て頂こうと思います。「本物」はこうなっているとか、「偽物」がどうなっているという話ではなく、ブランド品が高額である理由として、製造工程やそこに費やす時間を想像してみたり、そしてその精度などを感じて頂ければと思います。

こんな感じてパッと見でとても似ている二つのベルト。2つのベルトを並べてみた目では気づけないミクロの世界でその違いを確認します。尚、違う部分の詳細解説は省きます事をご理解下さい。

まず最初にロゴが刻印されている部分。刻印されたロゴの拡大画像カルティエのロゴがレーザー刻印!。小さな穴の集合体で文字を形成する方法ですが、硬いステンレスに簡単に文字などを刻む一つの手法です。慣れている人がこれを見ると瞬間的に頭に「????」という思考回路が働きます。また突っ込み所として、青いベルトはステンレスで製造されていると書かれており、18金は使わてれいないらしい。バックル表面の金色部分の部分は金メッキか?。見比べると色々と異なる部分が簡単に分かります。

これはクラスプ中央部の拡大画像。クラスプネジの拡大画像ネジの1カ所を拡大しましたが、こういう部分を眺めると分かり易いですね。尚、このネジの直径は1.5ミリなので肉眼ではこのような隙間は見えません。ネジ穴とネジの大きさを整えるのにどの程度の手間がかかるのか私には分かりませんが、今時では設備さえあれば大した技術や時間はいらなそうに思えます。簡単にいえば、そういう事すら省いているという事ですね。

同じくクラスプ中央の金具のアップ画像。クラスプの各部の造り例えば、赤〇のような部分を製造する為に費やす時間(コスト)の差が歴然です。硬度の高いステンレスで意味もなく湾曲させている部分とか断面の滑らかさを見ると、とても手間がかかっている事が分かります。違う箇所など沢山ありすぎるので解説しませんが、青丸の部分なども分かり易いかも。

こちらはバックル表面の画像。バックルの拡大画像拡大すると一段とその適当さが目につきます。ま~適当だから製造コストを抑えて安く販売する事が可能で、安いから「これでもいいか」と思う人がいてこういう品物は流通していくので、ある意味でニーズには答えているのかもしれない。正直30センチ離れてればこんなのには気が付かないしね。

この職業に慣れてくると見る部分が変わってきます。クラスプパーツの拡大画像こういう所って普通の人はまず見ません。そういう部分を敢えて探す事も重要かも。私のように性格が曲がってくる理由は職業柄なのかもしれない・・・・・。

こんな感じで拡大して見比べると、この「粗悪品レベル」の模造品だと誰が見ても判断は可能です。当店が加盟しているATF(全国質屋ブランド品協会)では、最新の真贋情報を上記のような資料をネットワーク上で展開し常に確認する事ができます。見た事がない模造品の新製品なども確認でき、昨今の手の込んだ基準外商品は本当に良くできており驚くばかりです。そういう品物がいつ店舗にきていいように、予習を続けることが結構大変だったりするのがこの仕事の特徴かもしれません。インターネット上で「本物」はこうだとか、「偽物」はこうだとかの情報検索が可能な時代ですが、インターネット上に掲載された時点でそういう点に関しては模造品製造業者様もその点を改善するだけなので、情報として意味もない上に更なる出来の良い模造品の開発に貢献しているだけのような気もしてます。ずっと前から続いているこのような真贋判定の「鼬ごっこ」の終焉は一体どこになるのか・・・・。

尚、今回は詳細情報を開示しても市場に影響は全くないと思ったので書いてみました。ただ驚いたのはサントス100用のベルトの模造品がある事かな。これ造ったところでサントス100自体の流通量が少なく、数も売れなさそうなので儲からなそうだと感じるのは私だけか・・・・?。それにどうせ見えない部分なので、わざわざカルティエのロゴなど入れる必要もないと感じるが。ロゴさえ入れなければ法律に触れるような品物ではないのに何とも残念は話だな~と思います。ロゴを入れれば模造品、ロゴが無ければ模倣品ってところかな。

本日は以上でございます。

[ カテゴリ:質屋あれこれ ] [ ブログ記事一覧 ]