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動物の毛皮コート

鴫原質店の弟さんです。

今月の市場の準備をしていたら毛皮コートが7着もでてきました。毛皮7着毛皮7着半分以上がエンバ(EMBA)の商品です。購入価格は数十万円、物によっては100万円を超える価格で購入されていることが想像できる超高級品です。今回はその毛皮コートの2次流通での価格に関して書いていきます。

せっかくなのでスタッフのM君と少しだけ着て遊んでみました。毛皮を着た写真毛皮を着た写真そんなに違和感がないのがうける!というかモデルさんみたいですね。

しかもこの赤い方は、今でも着れるのではないかなと思えるデザインで毛並みもステキです。赤い毛皮赤い毛皮私も着用したのですが、その数分後に体が痒くなってきました。除菌アルコールで体全体を濡らすまで消毒する結末(汗)。この毛皮コートというジャンルは大体の場合は何年も洗っていないものであり、定期的に干すなどをしている人も少なく、清潔な環境ではないことが多いです。多くの場合、押入れの隅にしまっているのではないでしょうか?。そういう先入観(現実は不明なので….)が体にアレルギーのような症状を出すのか、それとも実際にダニまみれなのかは分かりませんが、とにかく痒い‥‥‥。

この毛皮達はとても残念なことに、当店での買取値段は数百円~千円台の下の方の値段が殆どです。お電話で問い合わせを頂くと、徹底して「安くしか買えない」旨を謝りながらご説明し、またご来店頂いたお客様にはお詫びをしながらお見積をします。購入価格を想像できるからこそ、どうしても先に謝ってしまいます。適当な事を言って遠くからご来店頂いてもだれも得になりません。お客様は交通費の分だけ損をしますし、当店もイメージを悪くする可能性があるので、繰り返しますが徹底して「安い」ことを強調しお詫びします。

「何故そんなに安いのか!」とお客様に聞かれると「需給バランスの問題です」とそのままお応えします。実際にヤフオク!の毛皮の落札値を調べてみるとこんな感じの値段で取引されてます。ヤフオク!の値段ヤフオク!の値段もちろんこれは安い順で並べた一部の画像であり、ものによっては万単位で取引ているものもありますが、それらは主にブランド品の毛皮の場合。一般的な毛皮コートであれば、送料を考えなければ千円で仕入れる事のできるものがわんさかあるのが現実です。売りたい人と買いたい人のバランスが極端に悪い上、安くても売れない現状を踏まえると、なかなか難しい状況ですね。

そもそも暖かい日本のなかで、毛皮コートはその暖かいという機能性からの必要性というよりは、流行により皆が購入した商品だったのではないかと私は思っております。高級品志向が強かったバブル期において、富の象徴的なものであったのかもしれません。実際に60代~80代の女性で毛皮を持っていた方は多かったのではないでしょうか。逆に30~40代の方で毛皮コートを新品で買ったという方は極端に少ないように感じます。そして売って頂いたお客様からは「買ったけど使わなかった」という言葉もよく聞きます。

もう一つ毛皮の2次流通価格に大きく影響を与えたことがあります。それは毛皮に対する社会的環境が大きく変化してきたこと。数年前から「ファーフリー宣言」という言葉が露骨に目につくようになります。意味合い的には「リアルファー(動物の毛皮)の使用を禁止する」というもので、19世紀末にいち早くこの宣言をしているファッションブランドもありましたが、20世紀になると世界の一流ブランドが続々とこの流れに同調してきます。多くの方が知る「グッチ」や「バーバリー」なども2017年頃にファーフリー宣言をしたことにより、今では殆どのブランドメーカーの一般的基準になってきたようにも思えます。日本でも動物愛護法などができましたが、自然保護や動物愛護は世界的な流れなのですね。

ファーフリー宣言の中には目的が食用の動物なら、残った毛皮の使用は大丈夫とするというメーカーもあるようですが、ミンクもフォックスもきっと食べれるし食用にすることは可能。また、ウサギの肉などはハムなどの加工肉に使われているものもあり、ラビットという毛皮を使用することは問題ないのではないかと、何かと部分的に不思議な感じ。そんな理屈はいくらでも並べられますが、ファッションの為に「動物を殺すのを止めよう。動物の毛を着るのを止めよう」という事が、最も重要なイメージなのかな?と私は思います(現実は知りませんけど)。理屈ではありませんし、制度やルールもないので、このイメージがとても大事なのではないでしょうか。

この流れで、もし誰かが「動物の皮をファッションに使うのはやめよう」と言ったら素材に関する常識が変わるかもしれません。高級素材とされてきたダチョウの革(オーストリッチ)やワニの革(クロコダイルやアリゲーター)や、人々の生活に既に一般化されているモヘア(アンゴラ山羊の毛)やウール(羊)やカシミヤ(カシミヤ山羊)、そして牛革や豚革に至るまで結果的には動物の一部である事実は変わりません。あ‥‥‥‥モヘアやウールやカシミアは毛に属してるから、ここでは関係ないか。さらりと流して下さい。でも毛皮ですね(笑)。ただそんなことをすると高級品がなくなるので、ブランド側にとって絶対に望まない結末が想像できるので「動物の皮」に関してはきっと現状を維持しそうですね。

色々と思うところはありますが、世界の常識はいつも誰かに創られていくものです。そんな世界的な常識の変化もあり、毛皮に関するイメージも大きく変わってきました。昔は店頭で5千円位でだしておけば買って頂けたものですが、今では値段がどうとかではなく、販売している事が悪い事のような感じさえ覚えます。

(いつも通り)長くなりましたが、鴫原質店では毛皮の買取はやってはおりますが、上記の理由によりとっても安いです。ただ安いといっても、毛皮に関してはいつもも赤字覚悟で見積をします。例え数百円で買っても赤字になることがありますが、他の店舗に露骨に負けるよりは、ちょっとの赤字でお客さんに満足してもらいたいから!

でも100万円で買ったという毛皮でも数百円でしか買えない事もあります。これらの事情をお客様が知っているはずもないので、丁寧に色々とご説明はしますが、まずは最初にお詫びをしてからお見積をさせて頂きます。

なお、2次流通の価格については地域(県)特性やその店が参加する市場などによっても値段の価値観が違い、例えば他の地域(例えば北海道などの寒い地域)では全く違う価値観で取引されている可能性もありますので、上記が私から見た状況である事をご理解下さい。

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