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ダイアモンドのクラリティグレードについて

鴫原質店の弟さんです。

前回紹介したルースダイアを使ってダイアモンドの評価を決める4Cについて、3回に分けて書いていこうと思います。4Cとは「カラット」「クラリティ」「カラー」「カット」の4つを示しますが、今回の一連の更新では「カット」の説明は省きます。その理由は、目の前にある教材(ルースダイアモンド)のカットグレードに「FAIR」や「POOR」が無いからです。いつになるか分かりませんが、いい教材があったとき取り上げてたいと思います。

さて、今回はクラリティグレードについて。これはダイアモンドの透明度を示す指標で、内部の「インクルージョン」(内包物)の量や、「ブレミッシュ」と呼ばれる研磨済みダイアモンドの表面にある特徴を総合的に判断して決定されます。ただし、ソーティングレポートや鑑定書では「ブレミッシュ」について触れられることはあまりないので今回は振れません。

話の流れ的には、ダイアモンドの内部を拝見してグレーディングに影響している内包物を確認し、そのクラリティ評価を理解するという感じで進めていこうかと。私も仕事として、何度も何度も繰り返し同じ事をしていますが、教材(見る品物)によって特徴が違うのでいつでも新鮮味があり楽しめます。ただし、ただ解説するだけでは前回と同じ内容になると思うので、今回は視点を変えて「費用対効果」という部分に注目していこうかなと。何故かというと、私自身がとても費用対効果を気にする節約人間だからです(汗)。

教材に選んだのは、2カラットの「VS2」のルースダイアモンド。今回の教材に選んだダイアモンド選んだ理由は、ダイアモンドが大きくて内包物の写真が撮りやすいから!(←これ凄く重要)。そういえば前回、競り値(市場での売値)を紹介すると書きましたので、¥1,573,000で売れた事をご報告します。それから察するに小売りの価格は200万円位かな?。

このダイアモンドはソーティング袋の中でガーゼに梱包されていました。ガーゼでくるまれたダイアモンド14個をソーティングに出しましたが、このダイアモンドと0.3カラットの高評価のダイアモンドの2つだけがこのような待遇でした。2つ以外はソーティング袋に入れられているだけで、それが一般的です。長年同じことをやっているますが、そのことに疑問を覚えたのは初めてだ。次にソーティング依頼をするときにどんな基準なのか聞いてみたいと思います(←来年になるかも)。高額なものが特殊扱いされている訳ではないみたいだけど、その基準が実に興味深いですね。

そしてこのダイアモンドの大きさはこんな感じ。ダイアモンドの大きさを定規で撮影した画像ソーティングの右下に「Size8.05-8.21」という記載がありますが、直径の最大値と最小値を示しています。2カラットという響きにとても大きそうなイメージもあるようですが、現実はこんなに小粒です。カラットは重さの単位で1カラットは0.2グラムという意味。つまりはこのダイアモンドは2.057カラットなので0.4114グラムという意味合いです。「カラット」の説明はこれで十分ですね。

早速顕微鏡で覗いて「VS2」の理由を探してみます。ダイアモンドの内部を顕微鏡で覗いた様子大きなものがしっかりと写っているので、慣れている人は一瞬でインクルージョンを見つけられたかも。

もうちょっと拡大してみます。ダイアモンドの内部のインクルージョンを更に拡大した画像赤丸のところにインクルージョンが確認できます。この画像の倍率はもはや分かりませんが、直径約8ミリのダイアモンドという事は覚えておいて下さい。

ちょっと分かりずらいので更に拡大してみます。ダイアモンドの内部のインクルージョンをもっと拡大した画像左側のインクルージョンに視点を合わせているので、赤丸のインクルージョンが視界から消えました。単一焦点の拡大鏡の大きな特徴で、ピンポイントで視点を合わせるので数ミリ先や手前が見えません。ルーペでダイアモンドを見る時に、同じ距離から一生懸命ダイアモンドを見てもインクルージョンを見つけることはできず、小刻みに近づいたり離れたりして、ダイアモンドの最深部から最上部まで階層ごとに見ていく理由がこの為です。

今度は中央のインクルージョンに視点を合わせます。無灯状態でダイアモンド内部を撮影した画像無灯状態での撮影の為にインクルージョンの色が真っ黒になってますが、テーブルの下に小さな内包物がはっきりと確認できます。とにかく写真が大きいので錯覚してしますが、ダイアモンドの直径が約8ミリです。定規をおいて対比で見ると100分の1位に見えるから、このインクルージョンの大きさは0.08ミリ位なのか?。目で見る事など絶対に不可能です。

ということで、この2つのインクルージョンがある為に、このダイアモンドのクラリティグレードは「VS2」という事でした。このグレードは「ベリースライトリーインクルーデッド」と呼ばれ、定義は「10倍の倍率でインクルージョンがなんとか確認できるが、微小と特徴づけられ程度」というもの。ちなみにダイアモンド鑑定のプロが「10倍でなんとか確認できる」ものであり、ルーペを持っている人が誰でも見つけられない事を理解する必要があります。


目では全く見る事の出来ないミクロの世界ですが、クラリティグレードはダイアモンドの値段にものすごく影響をもたらします。凄く簡単に例えると、ダイアモンドの値段は4Cの掛け算のようなもので値段が決定され(←正確な言い方ではありませんが)、クラリティの最上位グレード「F(フローレス)」(10倍の倍率で何もみえない)と「VS2」では、値段が【倍以上】違うという、私のような庶民には到底理解ができない、と~っても不思議な価値観の世界となってます。

【最後に私自信の感覚を】
宝石は自分の余裕のある範囲で楽しむものです。こんなこと言うと怒られそうですが、私の生活レベルの費用対効果で考えると、クラリティは「SIクラス」で十分かな。カラーグレードとカットグレードが良ければダイアモンドはビカビカ(又はピカピカ)と輝きますし、SIクラスでもインクルージョンが肉眼で見えないものを選べば、最高級の輝きと見劣りしないものもあるはずです。確か私が結婚する時に渡したダイアモンドも、SIクラスだったような気がします。ジュエリーのあり方として、資産に余裕のあり過ぎる方が最高峰の品物を欲する一方で、「庶民の贅沢」や「お洒落などの楽しみ」としてジュエリーを身にまとうのもごく普通の事です。そういう事を考えれば、費用対効果を意識するグーレドがあってもいいと私は思います。「いい物」ってお金の払った分だけで決定づけられる尺度ではなく、その所有者の品物に対する満足度を評価する言葉こそ「いい物」であって欲しいかな。

尚、GIAの定義でSIクラスは「スライトリーインクルーデッド」と呼ばれ「ダイアモンド鑑定のブロが10倍のレンズでインクルージョンを確認できる」というものです(GIAホームページ)。でもさ、普通はダイアモンドという鉱物の内部を10倍のレンズで粗さがしする事ってないじゃん!。宝石としてダイアモンドを楽しむのであれば、SIクラスのダイアモンドも十分すぎるほどピカピカと輝いてくれるのです。カラーとカットなどの他の要素が伴う事が必要ですけどね。

本日は以上でございます。

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