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カルティエ「スマートリンク」サイズ調整システムと「クイックスイッチ」交換可能システムについて

鴫原質店の弟さんです。

社長様が市場(業者間オークション)で仕入れてきた腕時計に、私が初めて見る新しい時計の機能があり、ちょっと感動しちゃったのでご紹介します。サントスドゥカルティエLMの写真こちらはカルティエのサントスドゥカルティエLM(WSSA0013)、ブティック定価929,500円(6/17現在)で約2年前に発売された現行品です。腕時計の紹介をするつもりはないので、ご興味があれば公式ホームページ(こちら)で確認下さい。尚、リンクを貼ったページの型番はWSSA0030と記載されますが、革ベルトのバックル形状の違いです(←ベルトに穴があるかないか)。

紹介するのはこの時計に限らず、カルティエで新たに採用したベルトの構造について。本体とベルトの付根のアップ画像時計の裏側を見ると赤〇の部分がボタンになっており、ここを押して引っ張る事で簡単にベルトの脱着が可能です。カルティエの公式ページには「クイックスイッチ」交換可能システムと書いてありました。細部や機構は違いますが、以前ロードスターで採用されていた考え方で、専用工具も技術も知識もいらない、とても便利な機能ですね。

ベルトを外すとこんな構造になっています。ベルト側の結合部の画像ボタンを押すことで、本体と接触する赤〇の部分がフラットになり、本体との結合部分が無くなり取り外せます。またこのボタンの「遊び」は青〇をつけた部分で管理されているようですね。

本体側にはベルトの固定する場所が用意されてます。本体の結合部の画像この青〇の部分がベルトのパーツと結合して固定されるようです。本体側もベルト側もとてもよく造られていて、合体した時に隙間一つ見当たりません。この造りって簡単には真似できなさそうだし、真贋鑑定でもかなり役立ちそうかな。

時計には付属品がいくつかあり、ステンレスベルトもついてます。ベルト2本を含む他の付属品気分に合わせて自分でベルトを交換できるこの構造は、多くの方が望んでいる事でしょう。それにしてもこのカルティエと書かれた「棒」は一体何に使うのだろう?。初見なので分かりませんがベルト交換の補助アイテムだと思われます(←使い方不明・・・)。ベルトの脱着やコマ調整もしてみましたが、このアイテムを使わなくても簡単にできたんですよね。窪みの部分の意図を知りたいので色々考えましたが、意味不明で終わっちゃいました。

ステンレスベルトの細かい部分も見てみましょう。ステンレスベルトの結合部の画像と細部の造り黄色い〇をつけた部分は意図的にちょっとした隙間が全部のコマにあり、こういう部分に興味が湧いてきます。傷つけたくないので今は動かしませんが、何かしらの目的がありこのような造りになっているはずです。また、ベルトの裏には何やら不思議な部分があり、「何コレ?」とガン見し、数十秒間、真剣に考えてしまいました。赤〇の部分にベルト固定ピンが見えており、片方の側面でピンの頭が確認できますが、反対側にはピンを押す穴は見当たりません。

そして意味ありげなパーツを押してみます!。ベルトコマのピンの調整方法「パっキーン」というような音とともにピンが飛び出て、その瞬間に私も「ギャッ!」と声を上げました(実話です)。この部分はなんとボタンの役割を担っており、ベルト固定ピンを取るのに道具が必要無いという、とても凄い仕組みです。そして下の画像の通り、ピンは最後まで抜けない構造になっているようで、今までの構造を嘲笑うかのような、とんでもなく凄いアイデアだと思いました。カルティエ公式ページではこれを「スマートリンク」サイズ調整システムと明記しています。たった一つ気になるのは部品の寿命についてかな。複雑な造りはシンプルなものと比べると、どうしても劣化が早いからね。泥や埃が入り込んだら・・・どうしよう?。バネか何かが入っていると想像しますが、部品が下手ったらどうなるのかな?。

性格が悪い私はこの説明書にどうしても突っ込みを入れたくなりました。言葉の少ない説明書説明してないじゃん・・・(笑)。見りゃ分かるだろって感じの構成が面白く、100万円もする時計の説明書とは思えません。

個人的にこの部分は大事に説明して欲しいところなんだけどな~。日付変更の説明部分日付変更のルールを守らないと簡単に時計は壊れてしまいます。とはいえ、カレンダーディスクや日送車など使っていない構造かもしれず、もしかしたら説明の必要がないのかな?。この時計の内部構造の知識がないので、機会があれば時計工房の職人さんに聞いてみましょう。でもさ~画像左側の「ご使用に際しての注意」を見て、完全に理解することの出来る人って少ない気がしません?。

ちょこっと脱線しましたが、今回はカルティエの「スマートリンク」サイズ調整システムと「クイックスイッチ」交換可能システムを紹介しました。とても便利で実用的な構造により、ベルト調整をワザワザ人に頼む必要もなくなります。私は「ネジの規格は統一できないのか?」とずっと思い続けてました。ロレックス専用ドライバーとか、グランドセイコーに厚みを合わせたドライバーとか、常時20本以上のドライバーを保有し、その時計のネジに合わせてドライバーの厚みを削ったり鋭利にしたり、「ネジが統一されたらどんなに楽だろう」と考えるからです。ところがそんな考え方をすっ飛ばし、「ネジ」を回す事さえなくなったこのアイデアに、ただ心から驚き感動してしまいました。他のメーカーが追従するのかは分かりませんが、誰もが簡単にベルト調整が出来るというこの発想は、これからの腕時計のスタンダートになっていけばいいなと思います。

本日は以上でございます。

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