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タイ旅行記 – GIA訪問編

鴫原です。
先日、株式会社藤田商店の社長である藤田健様がタイを案内をして下さるとの連絡を受けました。
藤田さんは、以前GIA-AAJ(GIA同窓会日本支部)の会長を務められ、日本ジュエリー協会(JJA)の理事としても活躍されている、宝石業界では広く知られた方です。
個人的にも親しくさせていただいており、震災の際にも大変お世話になりました。少し不安もありましたが、藤田さんが案内してくださるのであればと思い、タイ行くことにしました。今回の旅行記を数回に分けて掲載したいと思います。

とはいえ、案内とはいっても、藤田様は現地で仕事をされており、その合間に私たちに時間を割いてくださる形になります。また、参加者それぞれの都合に合わせて、自由に集合・解散するスタイルです。すでに現地で合流していた方々もいましたが、私は「GIAバンコクへの訪問」から合流しました。

今回は藤田さんの事前の交渉により、GIA同窓会日本支部として受け入れていただけることになりました。
先ずは藤田さんの宿泊しているホテルに集合し、徒歩約20分の場所にあるGIA Bangkokへ向かいます。 タイの電柱タイの一般的な電柱。電線がぐちゃぐちゃになっています。後のことを考えてない気がする・・・ GIAバンコクが入っているビル

立派な高層ビルに到着しました。こちらがGIAの入っているビルのようです。
セキュリティは非常に厳重で、GIAに辿り着くまでには以下の手順を踏む必要があります。
①エントランスでパスポートを提出してキーを受け取る
②キーをかざしてゲートを通る
③エレベーター内でキーをかざし、GIAのフロアへ移動
④インターフォンでドアを開けてもらう

GIAバンコクがわざわざ作成してくれた画像
私たちのために歓迎の画像を作成してくれたようです

到着後は責任者のClaudiaさんから歓迎のご挨拶を受けた後、GIA Bangkokの歴史を伺います。
その後は宝石学フィールドマネージャーであるWimさんによるレクチャーが始まりました。特に、産地特定に関するお話が非常に勉強になりました。

以前から、成分分析や拡大検査で産地を特定することは知っていました。しかし、「この元素が含まれているのでモゴック産」「このインクルージョンがあるのでコロンビア産」といった具体的な特定は、元となるデータがなければ不可能です。そのデータがどのように収集されているのかについては、これまで知る機会がありませんでした。

データを収集するために、GIAでは沢山のサンプル(石)を集め、分析、保管しているとのことです。
そのサンプルは現在のところ29,000点以上あり、収集方法によって以下のようにタイプ別に分けているそうです。

  • Aタイプ
    -鉱山でGIAのフィールドジェモロジー(宝石学者)が自らハンマーで岩を叩いて採掘した石
  • Bタイプ
    -鉱山でGIAの研究者が地中から採掘者が石を採掘したところを見たものを入手した石
  • Cタイプ
    -Bタイプと同様鉱山で入手する石だが、採掘者が採掘する瞬間を見ていないもの
  • Dタイプ
    -鉱山ではなく採掘者から入手する石
  • Eタイプ
    -鉱山の近くにいる仲買人から入手する石
  • Fタイプ
    -国際市場の取引において2次的なソースから収集された石

AからFにいくにつれ信用度が下がっていきます。
勿論Aタイプのサンプルだけが理想的でしょうが現実的ではありません。彼らは100回以上鉱山へ収集に行っていますが、常に石を掘り当てられるわけではありません。
宝石とは希少だから価値が高いのです。
また、信用度の非常に低いFタイプも研究に役立つとのことです。例えばザンビア産とラベル付けがされたエメラルド100石入りの袋を見ても、10個が明らかにコロンビア産のように見える場合です。
それがFタイプのものであれば、誰かがコロンビア産のものを混ぜたのだろうと考えられます。しかし、それがAタイプのものであればザンビア産エメラルドの10%が実際にはコロンビア産に酷似しているということになります。この信用度の違いが研究においてとても重要とのことでした。

Winさんのレクチャーを終えると今度はラボを見学させていただきました。
普通は関係者以外は入れない領域ですので写真撮影どころか荷物を持っていくこともできません。
スマホも含めたすべての荷物を部屋に置き、スタッフオンリーと書かれたドアのロックを外してもらって入室です。
先ずは最初に案内されたのはダイヤモンドグレーディング室でした。そこでは複数の専用の機器でカットグレードやカラーを計測しています。また、沢山の顕微鏡があり、大勢のグレーダーがクラリティーのグレーディング及びプロッティング(キズの形状・場所の記録)を行っていました。

次は研究室です。
現在の宝石の研究においてはいくつもの専門的な機器が不可欠です。
この研究室には数百万~桁が一つ増える機材まで沢山の機材が所狭しと配置されていました。
また、前述の290,000点以上あるというサンプル収納場所をみせて頂き管理方法も説明いただきました。

研究室を後にし、最後はスクールを案内していただきました。
GIAからの景色
新しいビルで内装も綺麗、さらには高層階にあるため窓からの眺めも良く非常に快適です。
廊下には本棚がおしゃれに設置され世界各国の宝石関係の書籍がならんでいます。その中にはSUWAブランドで有名な諏訪恭一さんの本もありました。(ちなみに諏訪さんは日本人初のGIA-G.G.取得者です)
GIAに通っていた当時を思い出すと、朝から晩まで小さな石たちとにらめっこをするため、息が詰まりそうになったものです。こういう環境ならもっと捗っていたと思います。
GIAバンコクのスクールの特徴としては入学者は世界各国、本校があるアメリカからも来ているそうです。
その理由は、タイは宝石の加工が盛んなため世界中から宝石が集まり取引がされています。GIAで学びながら現場でも学べ、常に宝石に触れることができるから、本気で勉強したい人には最高の環境だとのことです。
とても良い環境にあるGIAバンコクへの日本からの入学を大歓迎しますとのことでした。

GIAでの記念撮影
参加者全員にお土産を頂きました


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