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記憶に残る 思い出深き時計との再会

鴫原質店の弟さんです。

昨日の夕方、ご来店頂いたお客様から時計修理の依頼がありました。修理伝票最初に対応したのは社長夫人でしたが、当店で昔かった時計が動かなくなったとのご申告。私が対応を変わり、時計の状態を確認し受付表を記載ました。

そして受付後、私はお客様の顔と時計を見て、ある事を思い出します。そして確認の為、「以前うちで修理して直ぐにゼンマイ切れた子ですよね?」とお客様に聞いてみました。思い出の時計お客様からの反応は「旦那さん、よく覚えてるね!!」と笑顔で反応してくれます。いつの事だかは忘れましたが、オーバーホールを終えた時計をお客様にお返しした10日位に、「動かなくなったよ~」と笑顔でご来店頂いた事を鮮明に覚えています。4万円前後の修理代を支払い頂いているのでお叱りを受けても当然なのですが、「ちゃんとやってね~~」的な事をその時も笑いながらおっしゃって頂き、私が平謝りをしていた事を覚えています。

そんな話の後でお客様が「購入した時の事」や「その時の会話の内容」などの思い出をお話してくれました。ガラスの傷「旦那さんから買ったんだけどさ~」と話は始まり、私はガラスに大きな欠けがある事を私が説明してたらしい。お店によって、たまたま見かけたこの時計の購入を直ぐに決め、近くの銀行(←今はもうない店舗)にお金を下ろしに行ったんだよな~、と教えてくれました。震災前の事で購入金額は70万ちょっとだったとの事。その事についての記憶は私にはありませんが、お客様が私の事を覚えてくれる事が嬉しかったりします。

10数年間以上毎日、普段使いをし続けているので「買って良かったよ」とこれまた笑顔で仰ってくれました。伸びたベルトベルトの各部で伸びがみられ、そのご愛用ぶりが伺えます。外装仕上げとオーバーホールをして、これからもバンバン使用してもらえたらいいね。

お客様がお帰りになられた後、修理品を管理する為に記録し続けているエクセルを眺めます。エクセルで管理された過去の修理履歴再修理を受け付けたのが2012年7月30日のことで、11年も前の事と知り驚くばかり。経験上、修理後にゼンマイが切れた事例は2度ほど経験しており、この時計がその2度目に該当します。オーバーホールの納品時に「10年間で2回だけ経験した非常に稀な事ですが、修理後にゼンマイが切れる事があります」という事をお客様に伝え続けてますが、日常の習慣となり「事実でない事を伝えていた事」に気が付いた!(笑)。この説明をし続けて11年が経過してるという事は、20年間で2回だけ経験した事例という事になるね。ま~説明文言は習慣なので変えないですが、その根源となる時計との再会はいい思い出となりそうです。

私的意見ではありますが、食品や衣類などの消耗品と違い、家や時計など、その後に長い時間を共有する商品を扱う上で必要な意識として、購入した方が商品と過ごすその後の時間と共に、こちら(店や人)の記憶も残り続ける可能性がある事を意識するのが必要です。うちのお客様でも多くの方が「おたくから買った」という話をされますが、商品を通じてこちらの事を覚えていてくれる事は感謝すべきこと。商品の売買を繰り返す立場にいると、そういう感覚ってつい忘れがちになりなりますけど、接客時の些細な会話でさえ、地方のこんな小さなお店が生き続けられている理由の一つかもしれないかな。今回のように、10年以上前の事を双方で覚えている事もあり、それが次の仕事にも繋がっているのですから。

本日は以上でございます。

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