2026年04月04日
鴫原質店の弟さんです。
少し不思議なジュエリーを見かけたので記録用に。毎日必ず宝石を見てるので、興味は薄れていくのは必然だけど、たまに変わったものを見ると、不思議と好奇心が溢れてきて深堀したくなります。
今回は少し黄色みがかった、言葉で表現することが難しい色合いの鉱物について。
この石の不思議な点は、光の角度で色が変わる事。
ごく普通の蛍光灯の下で見てるだけなのだが、角度によって雰囲気が少し変わります。黄色みが薄くなり、淡い青色に見えてくるのがなんだか不思議。色々と角度を変えながら、鉱物が持つ特徴を最大限楽しめる素敵なジュエリーだね。
背景色を変えて見ると、これまた不思議にカラーチェンジします。
全方向から光を取り込み、透明度が増したような気もするし、輝度そのものが上昇してるような感じに見える。鉱物内部の結晶構造が関係して、光の角度を屈折させることが色の変化の原理みたい。この鉱物が持つ特徴である「斜方晶系」や「二軸性」とか「多色性」という特性は眺めてて気分がいい。画像では宝石の「照り」が伝わらないのが残念だけど、見てて飽きないし好きだな。
この鉱物の正体は「ゾイサイト」。
宝石が好きな方は「ゾイサイト」と聞くと「タンザナイト」を思い浮かべる人が多そうかな。GIA(こちら)によると、青〜紫色の変種を「タンザナイト」と定義し、それ以外の緑、黄、ピンクなどの色合いは単に「ゾイサイト」と呼称してるようです。鑑別結果は「緑青紫色」との事ですが、これを言葉で聞いてイメージできる人がいるのだろうか?。
そういえば少し前に販売したこれもゾイサイトだった。
バイカラーでとても綺麗だったのを覚えてるけど、色の変化という意味では、今回のゾイサイトは圧倒的かも。ゾイサイトには様々な色があり、深堀すると興味深い鉱物の一つです。この色を鑑別書に表現するのなら何色というのだろう?。
GIAの説明は片隅に置いといて別の話を。アフリカのタンザニア北部、メレラニの丘にあるメレラニ鉱床で採れる「青色のゾイサイト」を「タンザナイト」と呼ぶのも一般的です。みんな大好きティファニー様が「タンザニアの夜」からタンザナイトと命名したとか。
青く美しい「ロイヤルブルー」のゾイサイトがこの地域でしか発見されなかった時代(50年位前)に命名されたようだけど、科学の進歩によりその構造は解明済みです。鉱物ゾイサイトの主成分はアルミニウムとカルシウムの珪酸塩(ケイ素と酸素を主成分とするアニオンを含む化合物の総称)だけど、結晶成長途上において何らかの要素(※地殻変動など)で【高熱など】が加わり、主成分のアルミニウム元素がバナジウム元素と置き換わる事で、無色透明又は褐色の「ゾイサイト」が自然の力により青色に変化して「タンザナイト」の完成です。鉱物・結晶構造における「同形置換」という現象で、この割合が多ければより「深い」そして「強い」青紫へと変色していくそうです。自然界で偶然に起きた奇跡を思うとワクワクするけど、偶然の産物は希少性も高く重宝されたのは想像に容易い。
一方で、ゾイサイトという鉱物は世界の色々な地域で採掘され、内包する成分により青・黄色・緑・ピンク・橙色・紫・灰色と様々な色合いを持つ鉱物でもあります。屈折率は約1.7、比重は3.35、モース硬度は6-7と非常に脆く柔らかいのも特徴の一つ。「同形置換」は元素そのものが変化するのに対して、宝石鑑別書でよく見かける「加熱処理」は色の見え方を処理する科学的技法。前提条件として、ゾイサイトの結晶内に「バナジウム」が含まれてる場合に限り、ゾイサイトが持つ「多色性の黄色味」を薄めて青色をより際立たせる事が可能で、人口的に見え方を変えることが可能になりました。加熱処理した「ゾイサイト」が「タンザナイト」という説と、タンザニアで採れた青紫の奇跡の宝石「タンザナイト」という認識がダブルスタンダートになってるようにも思えてきました?。もう少し深堀して調べてみよう。
CGLのホームページ(こちら)に10年位前にタンザニアのゾイサイト鉱山を訪問したレポート(日記)【こちら】が残されており、凄く貴重な情報源で感謝申し上げます。発掘現場や方法などが画像と共に説明がありましたが、そこに記されてた新たな発見として、その地で採取されたゾイサイトは品質に関わらず【加熱処理】を加えるとの事(※10年位前のレポート)。タンザナイトの鑑定書で【非加熱を見たことがない】のも事実で、逆説として「ゾイサイトを加熱したものがタンザナイト」と認識されるようになった現実も感じました。整理すると、【自然の力で同形置換により誕生した幻の宝石「タンザニアの夜」】と、【タンザニアで採れたゾイサイトを加熱処理した「タンザナイト」】と、【どこで採れたか分からないが、ゾイサイトを加熱処理した「タンザナイト」】の3種類が混在するのだろうか?。学問上のタンザナイトと一般認識の違いを少しだけ理解できた気がします。
綺麗なゾイサイトに惹かれて始まった話ですが、「タンザニアで取れた」という昔の黄金レッテルがない分、ゾイサイトという単語の「一般的な市場認知度」は低いのかもしれない。不思議な特権をタンザナイトだけが保有してる気がして、「ゾイサイト綺麗だな~」と感じた私は少し嫉妬してるのかもしれないね。とはいえ、美しいゾイサイトの市場評価がどの程度かは分からずとも、ゾイサイトのジュエリーを、ネットショップ掲載するとすぐに売れてしまう実績を見るに、宝石好きの方の目には、その価値がしっかりと映ってるのかもしれないと感じてます。今回取り上げたゾイサイトも、結晶構造の内部成分次第では、加熱処理すれば「タンザナイト」に変身する可能性を知るも、とても綺麗な宝石なので「このままでいいんじゃね?」とも思えてしまいます。宝石の名前を重視するか、見た目の美しさを重視するか、市場価値を重視するかなど、不思議な選択に迫られそうな鉱物(※ゾイサイト)だな~と感じました。
【最後に】所詮はブログなんで、「調べる」「書く」という作業に時間をかけてなく、定義が外れてる可能性があります。また、加熱処理に関しては、誰もが分かりやすいように言葉を選んだ結果の文字表現でイメージとご理解下さい。
本日は以上でございます。


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