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ROLEX エクスプローラーⅡ 1655

鴫原質店の弟さんです。

今回は暫く前に社長が店頭で買取した腕時計について、目的もなく思うところを書いていきます。ROLEX 1655の全体像その時計はROLEXの1655 エクスプローラー2。約40年前に製造されたもので、普通にガシガシ使っていたと思われる、とても年期が入ったお品物です。

日常的にご愛用していたと思われる深~~い傷があちこちにありました。傷だらけの状況ベゼルの数字の黒塗りも、経年劣化により剥がれています。最近はロレックスってかなりの値上がり相場を維持していますが、昔はそんなに高額品のイメージはありませんでした。多くの方は使う為に買っているので、傷だらけになっているのが当たり前のような気もします。

プラ風防は当然の如く傷だらけ。風防とリューズの状態画像リューズの状態は思いのほかいい感じかな。

そして究極的に難しいのはこの部分。SWISSの文字オリジナルはトリチウム夜光が使われている事を示す「T SWISS T」か「T SWISS <25 T」の表示がありますが、「SWISS」のみ表示されています。お客様のお話では文字盤をROLEXで交換したという事。アンティークロレックスのトリチウム特有の色味ではないので、ロレックスが好きすぎる人は1枚目の画像をみた瞬間に気が付いたかもしれませんね。

文字盤は交換されているので比較的綺麗な状態ですが、針の経年劣化との不釣り合いが悲しいところ。文字盤の拡大画像オレンジ色だったGMT針は薄っすらとした肌色に見えます。

次は暗い所で夜光の状態をチェック!。夜光の状態右上の画像は紫外線ライトで照らして撮影した画像で、針が黄色(オレンジ色?)に輝いてました。文字盤はルミノバでGMT針はトリチウムなのかな?。半減期が12年のトリチウムにしては怪しい発光量のような気がするけど、状態を見る限り当時のもののようにも見えてしまいます。こういう判別って難しすぎて、私ごときでは判断がつきませんね(苦笑)。ってか長針もGMT針も白い部分はルミノバのような気がするけど、気のせいかな?。

そしてこんな状態のお品物に、社長様の見積金額は〇〇〇万円!!(※金額伏せます)。この額に関しては「その金額を見出せる事はとんでもなく凄い!」と心から思い、そしてそれも伝えました。文字盤変更が無い状態であれば商品相場との比較のみなのでさほど難しくはないのですが、イレギュラー品の金額が正確かどうか分からない状態で、この額の見積を出す事など従業員にきる事ではありません。そこはやはり社長!って感じでしょうか。まじで「スゲ~~」って私は一日中言っていたように思います。

買取した後は古物台帳に記載する為、シリアルなどを確認していきます。シリアルと型番ベルトを外した部分に記載されたシリアルは「6番台の7桁」で、ケース自体が1979年製造と推定されます。

ベルトは見慣れた形状のセットがついてます。ベルトの型番3連シングルクラスプ「78360」にフラッシュフィット「580」は多くのロレックスに使われていた定番ブレスレットのような印象があります。1655の更に古い物(初期型)だと「7836」と「380」のブレスレットがついているそうです。横から見ると3重に巻かれている構造が確認できるブレスレットで、15年くらい前は結構頻繁に見てたのですが、最近は全く見てない気がして時の流れを感じてしまいます。

折角だから開けてみる!。ROLEX専用裏蓋オープナーROLEX専用裏蓋オープナーを使うのは暫くぶりだ。買取値が恐ろしい金額なので恐る恐る作業を進めます。もともと傷だらけなので、一つや二つ増えたところで何にも変わりませんが、一応仕事として扱う責任感ってやつです。

搭載されているムーブメントは「cal1570」。CAL1570ムーブメント画像1971年~1987年頃まで製造されていた、振動数が19,800のムーブメント様。前にも何かで書いた事がありますが、腕時計の技術革新はこの頃に完成の域にあったと思えます。観察してるだけで少しウキウキしますが、とても御年43歳には見えません。約50年前にこのムーブメントが完成していた事を思うと、僅かな進歩や違いはあるにせよ、時計技術の進歩の限界というものを考えてしまいました。果たして今後、どのように進化していくのだろうか。スマートウォッチという別の進化系が各ブランドから発売されてますが、それらとの競合になる事は想像もできないけど、そんな可能性も完全否定はできないような気もしてます。全てはお客様(ユーザー)が決める相場に従うだけですけどね・・・。

そして多くの方の目に触れない、裏蓋の内側に着目してみます。裏蓋の内側の画像昔はメーカー(ROLEX)でオーバーホールをすると、このように何かが刻まれていました。3回はメーカーでメンテナンスをしてるという事かな。今でもこの風習があるのかは知りませんが、1990年代頃のロレックスではこのような落書き(=メンテナンス記録?)を多く見てきました。今でもこういう事をしてたら、少し嫌ですね(笑)。

という事でこんな感じの腕時計を社長様が買取し、市場(業者間オークション)へ出品したところ、当店の買値より35万円も下の価格で入札があったそうです。もちろん売らないで引っ込めましたが、市場状況か文字盤変更が影響しているのか、はたまた検討違いか。兎にも角にも元金(仕入値)以上で何とか売り切りたい所です。持っていたお客様は「もっと高いものだ」という感覚だったようですが、売ってる値段と流通相場の差異が大きく異なる商品の一つかもしれません。アンティークって本当に難しく、私はとても関われる技量や知識がないし、そもそもROLEX愛が私には足りません(哀)。そしてその取引額にも何点があり、一つの商品で35万円の損って、心臓に悪すぎます(涙)。果たして、この腕時計の最終売値はどういう結果になることやら・・・。上手く事が運べばいいな~と思ってしまいます。

本日は以上でございます。

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