HOME > 質屋ブログ > オメガ スピードマスター アポロ11号月面着陸20周年記念モデル 本体編

質屋ブログ

オメガ スピードマスター アポロ11号月面着陸20周年記念モデル 本体編

鴫原質店の弟さんです。

オメガスピードマスター(ST145.022)について、第3回目となりましたが、今回は長年愛用され続けた34歳のこの子の状態をマジマジと見ていこうと思います。オメガスピードマスターの全体像時計というモノに対する「見方(考え方)」によって、人によって感じる事は異なるでしょうが、私はとても素晴らしい事と感じており、その点について書き進めていきたいと思います。

どういう使い方をすればこうなるのか?!。大きく全体が傷ついたラグの状態打痕と研磨の繰り返しにより時計全体の形状は大きく変化しています。まさに日々の相棒って感じで、使われ続けたんだろうな。ラグのエッジが殆どない・・・・(汗)。コレって凄くない??。この部分からスピードマスター様の頑丈さを理解する事ができ、更には、この時計から「オレ様はこんなに凄いんだゾ!」的なオーラをヒシヒシと感じました。こんなぶつけ方したら普通はそれだけでブっ壊れそうな気がするけど、「衝撃に弱い機械時計」という一般認識を完全に拒絶しているかのようです

今時ではあまり使われない案外丈夫なプラ風防も傷だらけ。このプラ風防も研磨仕上げが可能で、その痕跡も垣間見れます。傷と凹みだらけの風防「ベゴッ」と凹んだ部分の回りが丸いのは、研磨剤でなめして角を削ったからで、手触りもソフトで抜群だぜ!。指先でなでなでするとツルツルの触感が心を和ませてくれます。サファイアクリスタル風防では絶対に味わえない「何か」がこういう部分にあるように感じました。

9時側のケースサイドもベッコベコ(笑)。傷と凹みだらけのケースサイドこちら側は常に体の方を向いているので、ここまで大きなえぐれ傷がつくシチュエーションが想像できないのは私が時計を本気で使ってないからに違いない(?)。思いつくのは、自動販売機の取口に手を突っ込んで、出口に「バゴっ」っとぶつける位しか思い当たらんのだが・・・。刻印が消えかかるほどの研磨を繰り返しており、抉(えぐ)れた部分もとてもなめらか・・・・・で、やっぱり肌触りもまったりとソフトで手になじみます。いったい何度研磨をすればこうなるのかな(笑)。というか、凹みの深さが凄すぎて感心する一方で、スピマスって頑丈なんだ!って何度も繰り返し思ってしまいます。

ベルトがこれまたいい感じに出来上がってます。長年使われたベルト研磨により丸みを帯び、全体的にやせ細ってます。「あれれ?」と気がついたのは伸びるという限界値をもうすぐ超えそうな部分があり、赤丸の部分はもうすぐ崩壊の一歩手前かもしれないな。もともと「穴とピン」に隙間は殆どないはずだけど、半分以上が空洞になっていて穴が広がってるから、寿命はもうすぐなのかも。よくここまで頑張った!!と感銘する一方で、物であふれた現代社会において、ステンレスが崩壊しそうになるまで何かを使用したことがある人は少ないのではないでしょうか。いい意味でとても素晴らしい事だと思っています。

最後にオメガスピードマスター(ST145.022)のムーブメントCal.861さんとご対面。ムーブメントCal.861外装仕上げの回数と内部点検の回数は比例する傾向にありますが、外装と比較するとパーツの傷も少量で結構驚きました。ま~外装は本人の使い方で傷がつくけど、内部に関しては職人さんの手によって付けられる傷だから、人の物をベキベキ削る訳ないので、中が普通なのは当たり前か。尚、赤丸で印をつけた部分がムーブメントナンバーで、これが保証書に記載されている番号と一致すれば、付属品と本体のアイデンティティが証明できます。

裏蓋もちらりとのぞき見。ケースの裏蓋メーカーでのオーバーホールを6回(?)してるのかな(???)。この落書きの意味を知っている方は、是非ご教授下さい!!。見えない部分とはいえ、大切な時計の裏蓋の中にこういう書き込み(掘り傷)がある事を知ってる人は余りいないよね(笑)。もちろん最近はこんな事はしなさそう(←事実不明!!)な気もするけど、メーカーでメンテした商品があったら敢えて覗き見してみようかしら。

この時計を見て感じた事がありまして、何となく90年代に流通していたモノは、ジャンルを問わずほぼ全ての品物が「使われていたよな~~」ということ。特にその頃、爆発的に流行したロレックスのデイトジャスト(16233)は、このオメガ以上にボロボロの物を何度も繰り返し見てきました。もちろん、それが悪いという意味ではありませんが、「なんでだろ?」など自分なりに考えてみます。1990年~2011年までは緩やかな円高基調が継続し続け、海外製品の国内価格はドンドン値下がりし、2000年代後半より、定価よりかなり安く新品を購入する事ができる並行輸入がとても流行してましたよね。品物の価値は保管していればドンドン落ちていった時代(貨幣価値が継続して上がるデフレ経済)で、買ったからには使うのが当然の感覚(←だからその頃の品物は綺麗なのが少ない?)だったのかもしれない。(←事実不明!!。)そしてバブル崩壊後も定期預金の金利が8パーセントもつく時代が続いたなど、今と比べると少し裕福な時代だった事も影響してそうです。更には保有してる品物を売るという環境が今ほど栄えてなく(←むしろ殆どないかも)、大切に保管する意味など無かったのかもしれません。

その一方で2014年頃より、国内では継続した円安に伴い、保有する品物の価値は10年も継続して上昇し続け、多くのモノが貨幣の代替手段のような位置づけを確保し、代替手段でだからこそ換金価値を維持する為に使われない品物が増えたようにも思えます。確かに世界的な流行により多くのブランドがその価値を上昇させてきたのは紛れもない事実けど、為替の推移だけで見ても、2012年からたった10年間でスイスフランに対して円の価値は半分以下(←対ドルより落ちた)になったので、ロレックスやオメガの定価が倍以上になるのは当然の話。そしてユーロに対しても同様の下落率なのでルイヴィトンやエルメスの定価が倍以上なのも当たり前の事ことだけど、そこを見てる方はあまりいないのではないかな(?)。実質賃金も下がり続け金利がほぼゼロの社会で、ブランド品を買う対価は間違いなく上昇し続けたように思え(←※投資とかしない一般的な人の話)、苦労して買ったから使用しない、又はとっても大切に傷付けずに使うなど、扱い方も変わってきたのでしょう。更には、感覚的にでも持ってるモノの価値(←円としてね)が将来上がると信じれば尚更の事。そんな感じの品物が国内では沢山あって、そのように大切に扱われてきた古くも綺麗な日本の中古品を、外国人が「USED JAPAN!!」とブランドに仕立て上げ、好んで買いまくってるのも少し頷けます。しかし・・・円の価値が半分って・・・理解はしても相当嫌な話にしか聞こえないね(涙)。

(※上記は個人の妄想・空想であり、真実ではありません!)

意味もなく無駄に推測めいた空想話が続きましたが、このいい感じに愛用されたこのオメガちゃんは、中古市場で〇〇万円で売却(←金額隠しました→じゃ~書くなとは言わないで・・・)できました。こんなにベッコベコ!のボッコボコ!!なのに、ホントに驚きの金額です。そのような驚愕の価格を見出されるアポロ11号限定モデルの後継機(?)、アポロ11号月面着陸50周年記念モデルが発売されいていますので(公式ページはこちら)、今後いつか再来するかもしれないアンティークブームに備え購入してみても面白いかもしれません。という事で、3回続いたオメガスピードマスター(ST145.022)さんの紹介を終わりたいと思います。尚、私に関しては、ここまで痛そうな傷はつけたくありませんが、時計はガンガン使ってあげよう!!と思う派です。

本日は以上でございます。

[ カテゴリ:質屋あれこれ ] [ ブログ記事一覧 ]